筆者は、過去にヘアアイロンのレビューを何回か執筆しているし、使っ…
(2013年5月22日掲載)
2012年6月15日掲載
筆者のキーボード好きは今に始まったことではないが、ずいぶん昔に触ったっきりですっかり忘れていた名キーボードがある。それがKINESIS Advantageだ。
人間工学に基づいたカーブ、キー配列など、様々なアプローチが行なわれており、それらをエルゴノミクスキーボードと呼ぶわけだが、その中でもKINESIS Advantageは変態すぎる。
キーが左右に分かれているぐらいは珍しくないが、その左右のキーがお椀型にえぐれているのだ。その中に手を突っ込んでタイプするのだから、ド変態である。しかもスペースバーのようなものがない。親指にもそれぞれ複数のキーが割り当てられており、タイピングを分散するのだ。
最初にこのキーボードを目撃したのはもう15年以上前のことだが、当時はこの配列を見て、とても自分には使えないと思ったものだった。また値段も高かった。当時4万円以上したはずである。普通の人に買えるシロモノではない。
ところが最近、エルゴノミクスキーボードの歴史を調べていて、ふとこのキーボードのことを思い出した。今どうなってるんだろうと調べてみると、なんと日本にも正規代理店ができ、価格がずいぶん下がっている事がわかった。下がったとはいっても、2万7千円ぐらいである。だが15年前に比べたら、半額近い。
その昔は、ものすごく入手難だった。あのアキバですら、このキーボードを扱っているのは、今は無き本多のおやっさんが元気だったころの「ぷらっとホーム」1店しかなかった。ところが流通革命とは恐ろしいもので、なんと今では日本のAmazonでも売っているのである。
ここで一瞬気を失ってしまったのだが、次に気がついたときにはもう届いていた。これが15年間憧れ続けてきたキーボードである。
ただ実際にタイプし始めて、しまったーと思った。全然思うようにタイプできないのである。スペースバーの位置、エンターキーの位置が違うだけではない。普通のアルファベットの部分も、あまりにも変すぎてちゃんと打てないのだ。
おかげで使い始めて1週間というもの、原稿を書くのにものすごく時間がかかってしまい、文字数が足りなくなるという事態まで起こった。幸いネットの原稿は紙とは違い、文字数が少なくてもなんとかなるのだが、いやあこれは変態過ぎる。
ただ苦労して1週間我慢してタイプし続け、ようやく慣れることができた。このキーボードのポイントは、キーの機能を任意にコピーできることである。普通のキーボードを使う時の感覚で使えるよう、キートップを入れ替えてキーの役割をスワップするなど、いろいろ手を入れた。
普通キーの入れ替えはPCにソフトウェアを入れたり、レジストリをいじったりしないと変わらないものだが、このキーボードは内部のマイコンとメモリーを使ってプログラムすることができる。OSに依存せず、キーボードが変更点を覚えているのだ。この機能がなかったら、今もあんまり使えていなかったかもしれない。
そんな調子で自分流にカスタマイズしてみると、こんな配列ながらものすごく高速に入力できるようになった。まさに脳の延長である。キースイッチはChrerryの茶軸なので、非常に軽い。長時間タイプしても、指の疲労が少ないばかりか、上腕や肩の疲労も少ない。まさにプロのためのキーボードと言えそうだ。
世の中ノマドワークが流行りなのだそうだが、筆者はこのキーボードがあるせいで、家の中大好きな感じの仕事スタイルになっている。ソファに座ってノートPCで書いてもいいのだが、やはりがっしり机に向かってこれでタイプする方が快適だ。
厚みは結構あるが、フットプリントは普通のキーボード並みで、何よりも非常に軽い。中味はスッカスカな感じである。出張に持っていくということも、無理な話ではない。値段が値段だし配列が変態過ぎなので、万人には決してお勧めできないが、腱鞘炎などで抜本的に環作業境を改善しなければならない人は、一考の余地はあるだろう。
ライター/小寺信良
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITといったメディアを独自の視点で分析するコラムで人気を博す。主な連載は、AV Watch「小寺信良の週刊Electric Zooma!」、ITmedia「ケータイの力学」など。週刊メルマガ「金曜ランチボックス」も好評配信中。