「新型」というよりも「新生」。そう表現したくなるくらい大きな進化…
(2013年6月19日掲載)
2012年7月27日掲載
2012年7月12日、オーディオ機器の老舗メーカーであるデノンは、ヘッドホン・イヤホンの新しいブランド「ライフスタイルシリーズ」の製品群を発表した。
これまでデノンは、AVアンプやプリメインアンプなどのコンポーネント機器と比べると、それほど積極的にヘッドホン・イヤホン製品を展開してきたわけではない。だが、新ブランド「ライフスタイルシリーズ」は、今までとは力の入れ方が違う。音楽ファン・オーディオファン向けの高音質モデル「MUSIC MANIAC(ミュージックマニアック)」、遮音性が高くオフィスや旅行での利用に適した「GLOBE CRUISER(グローブクルーザー)」、クラブサウンド向きで重低音重視タイプの「URBAN RAVER(アーバンレイバー)」、フィット感にすぐれたスポーティータイプの「EXERCISE FREAK(エクササイズフリーク)」という、ユーザーのライフスタイルにあわせた4シリーズ計11機種を一挙にラインアップ。デノンのヘッドホン・イヤホンとしては、これまでで最大級の製品数をそろえてきた。さらに、「ライフスタイルシリーズ」は、2010年のデノン生誕100周年を機に、2年をかけて開発したブランドとなっており、どのモデルもチャレンジングでクオリティが高い。伝統の中に新しい要素を取り入れているのが特徴で、いい意味で、デノンらしさを払拭した製品に仕上がっている。
今回、そんな注目の「ライフスタイルシリーズ」の中から、高音質モデル「MUSIC MANIAC」シリーズの3機種「AH-D7100」「AH-D600」「AH-C400」を、発売に先駆けて試用することができた(いずれも8月上旬発売予定)。老舗メーカー・デノンが“音”にこだわって開発したシリーズだが、はたしてどんな製品なのか? どんなサウンドを聴かせてくれるのか? ここでは、3機種の特徴を紹介するとともに、音質のファーストインプレッションをお届けしよう。
「AH-D7100」は、デノンの持てる技術と、ぜいたくな素材を惜しげもなく投入したという密閉型ヘッドホンの最高級モデル。ドライバーには、新開発の「フリーエッジナノファイバー振動板」を備えた、50mmの大型ダイナミックドライバーを搭載しており、膨大な情報量を緻密に、高い解像度で再生することができるという。また、イヤーカップには、ひとつひとつ丹念に5か月かけてハンドクラフトした天然マホガニー材を使用。これによって、自然な奥行き感や豊かな音の響きを再現することが可能となっているようだ。このほか、ケーブルの素材や筐体構造といった細部にも、デノンがこれまでにつちかってきた技術がふんだんに生かされている。
![]() |
![]() |
|---|---|
|
デノンの技術と高級素材を投入した最高級モデル。しっかりとした外箱に梱包され、ロゴ入りのスタンドが付属する。筐体デザインも、従来の伝統的なヘッドホンとは異なり、流線形のヘッドバンドを用いたデザインになっている。長年つちかってきた技術を惜しみなく投入しつつ、新しい価値の創造に挑む。そんなデノンの姿勢を象徴するようなモデルだ |
|
さらに、「AH-D7100」のこだわりは、音質面だけにとどまらない。高級モデルらしく、美しい音を担保するフィット感や、ライフスタイルにあわせた利便性も、しっかりと考慮されている。
まずイヤーパッドだが、素材にはやわらかい低反発素材を使用。形状には「Pentagonal shape」(特許出願中)という、デノン独自の5角形を採用しており、耳全体を包みこむような形となっている。これにより、外部の騒音はシャットアウトしつつ、長時間快適に使用することが可能。加えて、イヤーカップは、ヘッドバンドの内側で角度を微調整できるようになっている。
利便性のよさとしては、ケーブルが着脱式となっていて、用途別に2種類のケーブルが付属する点があげられる。付属するのは、室内用のステレオ標準プラグ搭載ケーブル(3m)と、屋外用のステレオミニプラグ搭載ケーブル(1.3m)の2つ。室内用ケーブルは、伝送特性にすぐれた高純度7N-OFC線ケーブルを採用。屋外用ケーブルは、音楽の再生やボリューム調節が行えるリモコン(iPhone/iPod/iPadに対応)を搭載している。また、屋外用ケーブルのリモコンには、マイクが内蔵されているので、スマートフォンなどのヘッドセット代わりに利用することも可能だ。
![]() |
![]() |
|---|---|
|
iPhone対応リモコンを搭載した屋外用ケーブル(左)と、伝送特性にすぐれた室内用ケーブル(右) |
屋外用ケーブルのリモコンは、左右のボタンでボリューム調節が可能。中央のボタンで、音楽の再生、一時停止、スキップ、電話に出る・切るといった操作が行える |
「AH-D7100」は、最高級モデルと位置づけられるだけあって、とにかく緻密で解像度が高く、表現力が豊か。音の1粒1粒が美しく、臨場感のあるリアルサウンドを楽しむことができる。また、音響表現・空間表現も非常にすぐれているため、クラシック音楽を聴くとホールで聴いているかのような豊かな響きが味わえた。さらに高域の音の伸びもよいので、女性ボーカルとも相性ばつぐん。アーティストの息づかいなど、生々しいほどリアルに再現された。
加えて、単にリアルなだけでなく、メロディを躍動感たっぷりに聴かせてくれるという特徴も持っている。イヤーパッドのフィット感もあいまって、いつまでも聴いていたい気持ちにさせられた。ただ、電子音をふんだんに使ったクラブサウンド系の楽曲などでは、高音の一部がやや鋭くなるなどのクセが現れた。この点は、好みが分かれるところだろう。
「AH-D600」は、「AH-D7100」の弟分となる密閉型ヘッドホン。基本的な筐体構造や搭載するドライバーなどは「AH-D7100」と同様だが、各パーツの素材をより現実的なものに落としこむことでコストパフォーマンスを上げている。具体的には、ヘッドバンドやイヤーカップの素材に、共振が少なく音響特性がすぐれるというGFRP(グラスファイバー強化プラスチック)を使用。また、室内用ケーブルには、高純度7N-OFC線ケーブルではなく、通常のOFC線ケーブルを採用している。なお、イヤーパッドの形状や着脱式ケーブルは「AH-D7100」と共通。音質としては、高域から低域までクセのない音響特性をもち、音楽ジャンルを選ぶことなくさまざまなサウンドを忠実に再現することができるという。
こちらのモデルも「AH-D7100」と同様、解像感が高く、どの音も緻密かつ滑らかに再現してくれる。中域から高域にかけての、かすれ声や吐息を生々しく表現できるリアル感も、上位モデルとほとんど変わらないといっていいだろう。あえて違いをあげるとすれば、音の広がりや響きのよさにおいて、やや劣る点だろうか。「AH-D7100」の自然で豊かな音の響きと比べてしまうと、どうしても空間がほんの少し狭まったような印象を受けてしまう。
といっても、閉塞感があるということではない。むしろ高音の伸びのよさなどには息をのまされるし、並みのモデルに比べれば圧倒的にすぐれていることは確かだ。また、音響特性が変わった分、高域が落ち着き、低域の量感が増して、より幅広いジャンルの音楽に対応している感もある。響きを重視するクラシック派なら「AH-D7100」、バランス重視のオールジャンル派なら「AH-D600」といったところだろうか。
最後に紹介する「AH-C400」は、フルレンジ用と高域用にそれぞれ異なるドライバーを搭載したデュアルバランスドアーマチュアドライバー採用のカナル型ヘッドホン。小型ながら低域から高域まで幅広い音域をカバーし、原音に忠実に再生することができるという。ハウジングには、高剛性の亜鉛ダイキャストを採用。また、交換用のイヤーピースとして、通常のシリコン製を4サイズ、密着性を高めた2層シリコン製を3サイズ、遮音性と装着感にすぐれたコンプライフォーム(低反発)1サイズの計8種類が付属する。
![]() |
![]() |
|---|---|
|
「AH-D7100」や「AH-D600」と同様、iPhone/iPod/iPadに対応するマイク内蔵コントローラーを装備。8つの交換用イヤーピースと、金メッキ標準変換プラグ、カラビナ付きフェイクレザー製キャリングケースが付属する |
|
高音質を追求する「MUSIC MANIAC」シリーズに名を連ねるだけあり、解像度の高さや原音への忠実さ、臨場感の表現などはさすが。小型ながらも、低域はしっかり、なおかつ高域は美しく、バランスよく奏でてくれる。バランスがよいので幅広いジャンルを楽しむことができたが、なかでもアコースティック系の楽曲は、音のひとつひとつに立体感があった。オーバーヘッド型ほど音の広がりがない分、大編成で大量の音が混じり合う楽曲よりも、ボーカル&アコースティックギター、ボーカル&ピアノなど、シンプルな編成の楽曲のほうが、実力を発揮できそうだ。
デノンは、新ブランド「ライフスタイルシリーズ」のリリースにあわせて、ヘッドホンライフの楽しみ方を広げる専用アプリ(iOS、Android OSに対応)の提供も開始した。
シリーズ別に専用アプリがリリースされており、「MUSIC MANIAC」には「Denon Audio」を、「GLOBE CRUISER」には「Denon Travel」を、「URBAN RAVER」には「Denon Club」を、「EXERCISE FREAK」には「Denon Sport」を用意。デノンによれば、これらのアプリを利用することで、各シリーズのヘッドホン・イヤホンのパフォーマンスを最大限に引き出すことができるという。
今回紹介した「MUSIC MANIAC」用のアプリ「Denon Audio」では、プレイリストの作成が可能なほか、グラフィックイコライザーでの詳細な音質調整にも対応。70000局以上のラジオ放送に対応するインターネットラジオ機能も利用できる。その他のアプリでは、それぞれの用途にあわせて、旅行アプリへの簡単アクセス機能や、「Lirics Wiki」での歌詞表示、リアルタイムGPSトラッキング機能などが搭載されている。
取材・記事 価格comマガジン YMD-I
昔からクラシックが好きで、大学時代はオーケストラサークルでバイオリンを弾いていました。今回のレビューに際し、久しぶりにクラシックのCDを引っ張り出したところ、学生時代の青春の思い出がよみがえるよみがえる。当時は演奏会後の打ち上げで、ソロのメロディを合唱してソリストにコールをかけたりしてましたが、今思うとあれ、ほんと異質な文化だったと思います。