連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ) 

で、結局、野村ケンジは何を選んだ? ―USB DAC選び番外編―

ヘッドホンやスピーカー、プレーヤー、アンプなど、オーディオに関するテーマを決めて実力派製品を複数回にわたって紹介する、野村ケンジ氏のオーディオ連載「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ)。今回は、連載の第2シリーズ「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」の番外編として、野村ケンジ氏が個人的に購入したUSB DACの導入期をお届けしよう。

選んだのは、第4回で紹介した、ちょっと高めのアレ

さざまなUSB DACを6回にわたって紹介してきたが、タイトルに「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」とあるように、オススメの製品を選び出すために、その数倍の製品を試聴させてもらった。おかげで、だいぶUSB DACにはくわしくなったが、逆にいえば、良質な製品を聴くたびに「欲しい!」と思ってしまったことも事実。ということで、今回は番外編として、思わず(笑)購入してしまったUSB DACを紹介しよう。

さて、ここでクイズ。野村ケンジは、いったいどのUSB DACを導入した?

もちろん、選んだのは記事で紹介した13製品(本編11製品とプラスαの2製品)のひとつだ(そうでなければ、オススメという言葉がウソになってしまう)。ヒントは、タイトルそのもの。そう、今回の個人的なUSB DAC選びには、「ヘッドホンの音も重視した」という部分に、大いにこだわっている。

と、いつまでも引っ張っても仕方がないので、素直に打ち明けると、導入したのはORB の「JADE-2」。「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び 第4回」で紹介した、ちょっと値の張る、高級USB DACだ。

「JADE-2」のボディサイズは、238(幅)×317(高さ)×96(奥行)mm。USB DACとしては少し大きめの大柄なボディとなっている。USBのほか、光デジタル、同軸デジタル、アナログRCA入力に対応する

「JADE-2」の導入に踏み切った理由は、いくつかある。第一に、スタイルが気に入ったこと。パソコン周りに置くUSB DACとしては少々大柄ながら、ネオクラシコ的なデザインはなかなかに好み。そういったかっこよさも、製品選びには重要だと考えている。

とまあ、なんともミーハーなポイントからスタートしたが、もちろん「JADE-2」に決めた最大の理由は音質。なかでもヘッドホンアンプとしての優秀さが大きな理由だ。筆者は、仕事柄いくつかの(数10の)ヘッドホン・イヤホンを所有しているものの、個人的な好みの話をすると、実はAKG「Q701」が大のお気に入りだったりする。何を隠そう「Q701」とそのプロ用バージョンである「K702」の両方とも所有しているという、我ながら大層なバカっぷりだ。しかしそれもやむなしと思えるくらい、この「K701」シリーズ(基本となったモデルを用いて個人的にはそう呼んでいる)のサウンドは魅力に富んでいる。何よりも表現が細やかで豊かなうえ、人の声も楽器の演奏も、「コレ本当にモニター用なの?」と思ってしまうくらい躍動的で色彩豊かなのだ。しかも、ヘッドホンとは思えないくらい、自然でスケール感の大きい空間表現も持ち合わせている。世の中には数多の名機があるけれど、「K701」シリーズもそのひとつといえる存在だろう。

音楽プロデューサー「クインシー・ジョーンズ」氏とのコラボレーションで誕生したAKG「Q701」。筆者は「Q701」のホワイトカラーモデルを所有しているが、ライトグリーンがイメージカラーであるため、写真のような可愛らしいカラーバリエーションも用意されている

しかしながら、「K701」シリーズには唯一にして最大のウィークポイントがある。それは、ヘッドホンアンプに相当の実力を求めることだ。特に低域の駆動力に関しては、下手なピュアオーディオアンプ(のヘッドホン出力)では太刀打ちできないような孤高っぷりである。しかし「JADE-2」は、そんな「K701」シリーズをいとも簡単にならしきってくれるのだ。

正直いって、最初は驚いた。いくらオペアンプにJRCの「MUSES01」を採用したといっても、それだけでここまでの上質さは実現できるものではない。電源まわりに精通しているORBというメーカーだからこそ、実現できたクオリティなのだと思う。確かに、USB DACとして優秀な製品はほかにもたくさんある。しかし、ヘッドホンアンプとしての側面にフォーカスして考えると、この価格でこのレベルに達している製品は、そうそうないだろうと思っているのが正直な感想だ。

筆者は、「JADE-2」用の電源ケーブルとして、ORCの「HC-T150C」を使用している

ということで、思わず(笑)「JADE-2」を導入して3か月あまりが過ぎたが、いまではその副産物というか、意外な恩恵も授かっている。というのは、「K701」シリーズという(僕が理想とする音が)ならしにくいヘッドホンが楽々動くくらいなので、多くのヘッドホンのリファレンス「ヘッドホンアンプ」として、大活躍し始めたのだ。趣味で手に入れたものが仕事でも大いに役立つなんて、こんなにラッキーなことはない。というわけで、「JADE-2」はますますのお気に入りとなり、今後も大いに活躍してくれそうである。

JADE-2

JADE-2

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「JADE-2」だけでなく、500台限定生産のアレも購入

さらにもうひとつ、音のよさもさることながら、希少性という誘惑に負けてしまい、思わず手に入れたものがある。それは、「“超”高級USB DACの驚くべき極上サウンド ―USB DAC選び第6回―」で紹介した、AUDIOTRAKの「DR.DAC2 DX TE(Top Edition)」だ。こちらは多彩な入出力を用意した高機能モデルで、かつヘッドホンのバランス駆動もできる通好みの製品だが、なかでも今回500台の数量限定で発売されたトップエディションは、格別の出来栄え。個人的にはそれまで気になっていた駆動力の弱さや、ていねいだけどちょっと地味な音色感が払拭され、高解像度ながらもダイナミックな聴かせ方をしてくれるようになった。これはいいと思い、しかもいま決めなければ二度と手に入らないかも、という状況も手伝って、思わず導入を決めてしまった。まだうまく活用できているとはいえない状況だが、今後は腰を据えてじっくり取り組みたいと思っている。

通常版よりも高品位なサウンドが楽しめる「DR.DAC2 DX TE(Top Edition)」

このように、今回の記事を通して野村ケンジ自身は、1+1製品のUSB DACを導入することとなった。しかしこれは、あくまでも筆者個人の趣味性を大いに反映した結果であり、選択の基準はひとりひとりで異なっていてしかるべきである。また今回の連載で紹介させてもらった製品はいずれも魅力的で、どれを選んでも決して後悔はしないはず。それぞれの好みに合ったイチバンの製品を、選び出してほしい。


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

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