連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ) 

“超”高級USB DACの驚くべき極上サウンド ―USB DAC選び第6回―

ヘッドホンやスピーカー、プレーヤー、アンプなど、オーディオに関するテーマを決めて実力派製品を複数回にわたって紹介する、野村ケンジ氏のオーディオ連載「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ)。連載2シリーズ目となる「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」も今回でいよいよ最終回となる。

第6回(最終回) 高額USB DACのクオリティの高さを検証

価格だけですべてを論じることはできないが、現代の世にある多くの製品が、高価であればあるほど機能性にすぐれ、そのクオリティも高まっていく傾向があるのは確かだ。オーディオ製品もしかり。手軽かつ安価に高音質サウンドを手中にできるUSB DACですら、横並び比較では高額モデルが有利な傾向にある。そこで今回は、超高級USB DACがどのくらいのクオリティ“格差”を持ち合わせているのか、「ZODIAC GOLD」を例に検証していこうと思う。あわせて、USB DAC選びの最終回として、本シリーズでピックアップした計11製品をまとめるほか、手に入れたUSB DAC製品の実力をうまく引き出すためのセオリーもいくつか紹介しよう。

高級モデルならではのサウンドを実現、Antelope Audio「ZODIAC GOLD」

本体価格399,000円の高級モデル「ZODIAC GOLD」。最高384kHzのサンプリングレートに対応する

米国・ロサンゼルスに本拠を置くAntelope Audio社は、スタジオなどで使われる業務用クロックジェネレーターを得意とする、プロオーディオ機器メーカーである。プロオーディオ機器の世界では、デジタル機器であれば必ずといっていいほど内蔵されているクロックモジュール(水晶発振器など)は使用せずに、外部の専用機器からクロック信号を得ることが多い。なぜわざわざそんなことをするかというと、機器同士でタイミングがわずかにでもずれると、いろいろな不具合が発生するためだ。その不具合というのも、単に信号の精度が落ちる(音質が劣化する)だけでなく、場合によってはある機械を通した信号だけ「頭のタイミングがあわない」「時間が延びてしまう」などの致命的ケースが生じることもある。それらを防ぐために、プロオーディオの世界では複数のデジタル機器が同じクロックジェネレーターから高精度な信号をもらうシステムが利用されているのだ。


そういった高精度さを要求される機器を作るメーカーが、独自のデジタル技術に関するノウハウを生かして作り上げたUSB DACが、この「ZODIAC」シリーズだ。なかでも「ZODIAC GOLD」は、その頂点に位置するハイエンドモデルとなっている。本体のみで399,000円、専用電源(VOLTIKUS)のセットパッケージで472,500円という、USB DACとしては超高額なプライスタグが付けられているだけに、機能・音質ともに、徹底的なこだわりが投入されている。


たとえば、USBコントローラーに自社開発のものを採用することで、対応するサンプリングレートは最高384kHzとなっており(Mac OS Xのみ。Windowsは192kHzまで)、現在あるUSB DAC製品の中でも最高峰クラスに達しているのだ。しかもOS標準ドライバーのままで対応するというから驚きだ。これぞ高額モデルならではのアドバンテージといえる。また、お得意のクロックは、同社最新モデル(第4世代クロックジェネレーター「TRINITY」)と同等のクオリティが与えられており、これによってあらゆるデジタル入力のジッターを排除するという。さらに、外部クロックジェネレーターを接続することも可能となっている。


また、入出力も、入力がデジタル4系統(USB、同軸、光、AES/EBU)とアナログ2系統(フォーンバランス、RCAアンバランス)、出力がデジタル3系統(USB、同軸、AES/EBU)とアナログ2系統(XLRバランス、RCAアンバランス)という、豊富なバリエーションを搭載している。加えてインピーダンスが2段階で切り替え可能なヘッドホン出力も用意。高精度なステレオバランスを保つ0.05dB対応のステップ・リレー式ボリュームとも相まって、プリアンプやヘッドホンアンプとしても活躍できるようになっている。

デジタル3系統の出力に対応するなど、多彩な入出力端子を装備

はたしてそのサウンドはというと、一聴して気がつくのは、ケタ違いのていねいさときめ細やかさだ。演奏の1音1音が、詳細なニュアンスまで取りこぼしなく再現されており、聴き慣れたはずの演奏が、まるで高感度マイクを使った別録音のように感じられる。さらに密度感も高いため、ボーカルの歌声やメイン楽器の演奏が、まるで1歩も2歩も前に踏み出したかのような印象を強める。さらにダイナミックレンジに関しては、きめ細やかでありながらも絶対的な幅がとてつもなく広く、演奏が普段以上に抑揚豊かに感じられる。

「高額製品だから音がよくて当たり前」という、うがった見方を一瞬にして消し飛ばしてしまうほどの、とてつもなく上質なサウンドだ。ここまでの音を聴かせてくれるのだったら、高額製品の存在意義は確かにあると思う。そればかりか、50万円足らずの金額でここまでの音が手に入るのだから、やはりUSB DACなどのPCオーディオ製品はコストパフォーマンスが高いジャンルだといえよう。高級モデルのよい見本とまで言える、名機であることに間違いはない。

アルミ製のリモコンが付属


総論 ZODIAC GOLD + VOLTIKUS(電源ユニット)

<オススメポイント> PCオーディオはここまでハイクオリティな再生が可能なのかという、新たなる音の世界を見せてくれる超絶サウンド。
<ウイークポイント> 高品位ゆえに高額であること。また外観デザインも好みが分かれそう。

・解像度感 ★★★★★
・SN感 ★★★★★
・ダイナミックレンジ ★★★★★
・デザイン ★★★☆☆
・コスト ★★★☆☆

ZODIAC GOLD

ZODIAC GOLD

価格.com最安価格(2012年1月5日現在) 399,000

ピックアップした11製品のまとめ

以上で、連載2シリーズ目「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」の製品紹介は終了となる。あらためて、本シリーズでピックアップしたUSB DAC11製品をおさらいしておこう。

今回ピックアップした4機種

モデル 価格.com
最安価格(※)
連載 オススメポイント
NuForce「Icon uDAC-2」 13,900 1回目 コンパクトなサイズとバスパワー駆動によるポータブル性と、良好なサウンドクオリティを両立。
iBasso Audio「D5 Hj」 22,270 2回目 ポータブルヘッドホンアンプとしても活用できるコンパクトさに加えて、USB DACとしての実力は兄弟モデルのなかでも頭ひとつ抜きん出ている。
Fiio「E7」(+「E9」) 10,636 2回目 ポータブルHPA、据置型USB DACそれぞれにとって良好なサイズ/拡張性となる絶妙な組み合わせ。E9ヘッドホン出力の駆動力の高さも魅力。
AUDIOTRAK「DR.DAC2 DX」 32,800 3回目 入力数が多いことに加えて、オペアンプを交換して遊べる楽しさ。
Styleaudio「CARAT-TOPAZ Signature」 34,800 3回目 コンパクトなボディながら、クオリティの高いサウンドが魅力。
ラトックシステム「RAL-24192UT1」 49,900 4回目 コンパクトなボディにクオリティの高いサウンド。USBバスパワー駆動もうれしい。
ラトックシステム「RAL-2496HA1」 13,657 4回目 コストパフォーマンスの高さはかなりのもの。USBバスパワー&標準ドライバーの手軽さもうれしい。
ORB「JADE-2」 118,000 4回目 解像感、SN感にすぐれた魅力的なサウンド。ていねいに作られた筐体も好感が持てる。
RME「Babyface」 65,976 5回目 コンパクトなサイズと想像をはるかに超えるハイクオリティサウンド。カラーバリエーションがある点もうれしい。
GRACE design「m903」 5回目 ヘッドホンアンプ、プリアンプとしての多機能さと確かな音質。
Antelope Audio「ZODIAC GOLD」 399,000 6回目 PCオーディオはここまでハイクオリティな再生が可能なのかという、新たなる音の世界を見せてくれる超絶サウンド。

※2011年12月26日現在の価格.com最安価格

それにしても、このところのUSB DACブーム、PCオーディオブームの盛り上がりには驚くばかりだ。ここ1年で、どれだけの数のUSB DACがデビューしたことだろう。さすがに総数までは把握し切れないものの、少なくとも3ケタに到達する製品数が登場したことは間違いない。PC周辺機器レベルでの製品開発ができるという手軽さもあるのだろうが、当然ながら、注目されているからこその製品数であり、いま売れている製品カテゴリーであることは確かだ。

このように、ちまたに多くのUSB DAC製品が並ぶようになり、選択の幅が大いに広がってくれたことは、いち音楽好きとしてはうれしい限り。確かに選び出す際の困難さも増したが、それもひとつの楽しみといえる。今回の連載で、6回にわたって紹介してきた計11製品は、いずれも太鼓判が押せるものばかりだ。ぜひとも、USB DAC製品選びの参考にしてもらえればと思う。

ちなみに、連載で紹介した11製品以外にもオススメ製品はいくつかある。たとえば、JAVSの「nano/V」は、1万円を切る実売価格ながらも、96kHz/24bitに対応。アナログ(ライン出力やヘッドホン出力)だけでなく光デジタル出力もできる2系統の出力を持つため、ヘッドホンアンプやUSB DACだけでなく、USB DDCとしても活用できる。サウンドクオリティもなかなかにレベルが高いので、コストパフォーマンス優先の入門機がほしい人にはもってこいの1台だ。

いっぽうで、激しい競争は製品の急激な進化を促し始めている。第3回で紹介したAUDIOTRAKの「DR.DAC2 DX」からは、さらに音質を向上させた「DR.DAC2 DX TE(Top Edition)」が追加発売された(500台の限定生産)。これがまたすばらしいのだ。オペアンプやコンデンサーなどを交換したことにより、レギュラーモデルから格段にクオリティアップ。(筆者的に)唯一の不満だった音の勢い、低域の駆動力もずいぶん改善されている。こちらも要注目だ。

96kHz/24bitに対応する「nano/V」

500台限定生産の「DR.DAC2 DX TE(Top Edition)」

USB DACの実力を存分に発揮させるためには!?

最後に、せっかく購入したUSB DACの実力を存分に発揮させるために、利用時に注意してほしいいくつかのポイントを紹介しておこう。

まず第1に、これは購入前に試しておく必要があるのだが、自分の愛機(ヘッドホン)との相性をしっかり確認しておくことだ。特にAKGやゼンハイザーなど、ヨーロッパ系ブランドのものは能率が低かったり、高いインピーダンス特性を求めるものが多いため、しっかり「音が鳴りきる」駆動力がヘッドホン出力に備わっているかを確認しておく必要がある。インピーダンス的には「300Ωまで対応」と書かれていればスペック的にはまず大丈夫だが、本当に相性がよいかどうかは聴いてみないとわからない。できるだけ、購入前に自分のヘッドホンで試聴することをオススメする。

第2に、余裕のある電源ラインを確保しておくことだ。高額なオーディオ用電源タップや電源ケーブルを活用するのがベストだが、そこまでしなくても、オーディオ機器用に個別の電源タップを用意しておくだけでもずいぶん音質が変わってくる。不要なノイズに悩まされることのないよう、パソコンなどと同じタップからのタコ足配線は、なるべく避けるようにしよう。

第3に、USBケーブルはオーディオグレードのものを活用することだ。残念ながらUSBケーブルは、エラー訂正ありきを前提としたデータ伝送用ケーブルのため、PCオーディオのようなリアルタイム伝送を苦手とする(クオリティ低下が発生しやすい)傾向がある。オーディオグレードのケーブルは、そういった劣化を最低限に抑えるよう工夫されているので、それをうまく活用するのが有効な手段となる。コスト的に無理のない範囲で十分なので、こちらもいろいろと試してほしい。

USBケーブルは今回の試聴に使用したSAEC「SUS-480」(0.3m/22,050円)あたりのクラスだと確実なクオリティを提供してくれるが、価格的になかなか手を出しづらいという人もいるだろう。コストパフォーマンスも考慮すると、オヤイデ「d+ USB class S」(オープン価格)やクリプトン「UC-KS」あたりをオススメしたい。写真は左からSAEC「SUS-480」、オヤイデ「d+ USB class S」、クリプトン「UC-KS」

試聴環境について

今回の試聴は筆者の試聴室にて行った。使用したパソコンは、Acer「AS1410」というひと昔前のごくありふれたスペックを持つノートパソコンだ。ただしUSB DACとの接続にはSAEC製の高級USBケーブル「SUS-480」(0.7m/23,100円)を使い万全を期している。またUSB DACから出力されたアナログ信号はRCAケーブルでいったんAVアンプ(パイオニア「SC-LX71」)を経由してパワーアンプ(ヤマハ「101M」)へ伝達、TAD(パイオニアのプロ用機器ブランド)の「TL-1601b」(15インチ口径のウーファー)+「TD4001」(4インチ口径のホーン型ドライバー)の2ウェイスピーカーにてサウンドクオリティをチェックした。

またヘッドホン出力に関しては、ソニー「MDR-Z1000」とAKG「Q701」の2モデルを活用して音質確認を行っている。

SUS-480

ソニー「MDR-Z1000」

AKG「Q701」

評価ポイントについて

今回の評価ポイントは、下記の5項目について表記させてもらうことにした。満点は5点。このほか音の密度感や生々しさ、熱気の高さなども評価ポイントに加えたいところだったが、それらは複数の特徴によって作り上げられている(加えて主観的なニュアンスが高い)ものであるため、文章内に表現するのみにとどめている。

・解像度感……音のきめ細やかさ
・SN感……無音時の静けさ、音が出ているときのピュアさ
・ダイナミックレンジ……音の強弱の幅広さやニュアンス表現の細やかさ
・デザイン……純粋なデザインのよさに加えて使い勝手のよさも考慮
・コスト“音質”パフォーマンス……音質のよさと金額の高さを相対値として評価


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

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