連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ) 

憧れのプロブランドが持つ驚くべき実力 ―USB DAC選び第5回―

ヘッドホンやスピーカー、プレーヤー、アンプなど、オーディオに関するテーマを決めて実力派製品を複数回にわたって紹介する、野村ケンジ氏のオーディオ連載「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ)。連載2シリーズ目となる今回のテーマは「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」の5回目。プロユースのUSB DAC製品を紹介する。

第5回 クオリティの高さから人気を集めるプロユース製品

「PCオーディオ」という新しいオーディオのカテゴリが生まれたのは、諸説あるものの、黎明期に重要な役割を果たしていたのが「DTM(デスクトップミュージック)」、いわゆる自宅スタジオで録音や楽曲編集を行う際に利用するプロユースの機材たちだ。こういった製品は、当然ながら録音性能が重要視されるが、同時に再生クオリティもなかなかにレベルが高く、それに目を付けたオーディオファンが使い始めたのである。ゆえに、プロユース製品は、いまでも高価なものが主流になっているが、高いクオリティと信頼性が、かえって人気を集めることにもなっている。今回はそんなプロ用アイテムをリリースする2ブランドのUSB DAC製品を紹介しよう。

エントリーといえどもさすがはRME、その実力の高さは折り紙付き「babyface」

RMEの新モデル「babyface」。コンパクトボディとわかりやすい操作性を採用したのが特徴。上面にコントロール用のノブとボリュームボタンを装備する

RMEといえば、スタジオ機材をメインにラインアップするドイツのメーカーであり、同社の「Fireface」シリーズ、なかでもUSB端子を持つ「Fireface UC」は、DTM系“高級”PCオーディオの発端となったといっても過言ではないくらい、定評あるブランドだ。

そのRMEから、昨年、PCオーディオ系のユーザーも意識した新製品「babyface」が誕生した。プロユースを前提としていたため、これまでの製品すべてがラックタイプだった(ハーフサイズながらFireface UCもそうだった)のに対して、「babyface」はデスクにおいてもかさばらないコンパクトなボディを採用し、操作系も大きなダイヤルとボタン2つが天板に用意されているのみという、誰もが扱いやすいシンプルな構造となった。その分、付属のソフトウェアをパソコンにインストールして詳細な調整を行うことにはなったが、ミキサーを一度でも使ったことのある人であればすぐにでも扱えるわかりやすいインターフェイスが用意されているので、慣れてしまえば操作にとまどうことはない。逆に「プロっぽくていい」と思う人もいるはずだ。

エントリーモデルとはいえ、機能性も音質も、いっさいの手抜かりがないところがRMEならではのアドバンテージだ。USBのほかにアナログ/デジタルの10入力/12出力を用意するほか、192kHz/24bit対応のAD/DAコンバーターや2系統のスタジオ・クラスのマイクプリアンプを搭載するなど、USB DACとしてだけでなく、録音用機材としてもかなりの優秀さを誇っている。また音質の中核となるメインプロセッサーには、200MHz動作の「SteadyClock」を採用することで、遅延のない、安定した再生を実現。そのほかにも随所に上位モデルからのテクノロジーを受け継ぐことで、遜色のないサウンドクオリティを確保しているという。しかも、これだけの機能性を持ちながら、バスパワーで駆動するのだから驚きだ。

右側面にヘッドホン端子を搭載

付属のブレイクアウトケーブルを利用することで、最大10入力/12出力に対応

そのサウンドは、確かに自信を持つだけのことはある、かなりのハイレベルさを持ち合わせている。その音は、まるでよく研ぎ澄まされナイフのごとく、鋭く、スピード感に溢れている。ベール感はいっさい介在せず「リアル」というよりは「あからさま」とすらいえる、ダイレクトなサウンドだ。さすがはプロ用機器、といったところだろう。人によっては「もう少しオーディオ的なやわらかさを持っていたほうが好み」と思うかもしれないが、録音されたそのままの音を聴くことができるのは、捨てがたい魅力でもある。そのうえ、本来の使い方、録音機材として、おおいに活用できる多機能さも持ち合わせている点も見逃せない。このクオリティが約7万円で手に入るなんて、驚くべきコストパフォーマンスだと思う。銘機と呼ぶにふさわしい存在であることに間違いはない。

ちなみに「babyface」には、基本カラーとなる「メタリック・シルバー」や「メタリック・ブルー」以外にも、限定モデルとして「パステル・ピンク(Ladyface)」、「スノー・ホワイト(Snow Edition)」というカラーバリエーションが用意されている。なかでも限定モデルは、標準のバランスケーブル(XLR端子/ブラック)に加えてアンバランスケーブル(RCA端子/ホワイト)も付属しているため、さらなるお得感がある。こちらの製品が気になっている人は、限定数がなくならないうちに購入するのがベストかもしれない。


総論 RME babyface

<オススメポイント> コンパクトなサイズと想像をはるかに超えるハイクオリティサウンド。カラーバリエーションがある点もうれしい。
<ウイークポイント> 外観デザインが好みの分かれるところ。

・解像度感 ★★★★★
・SN感 ★★★★☆
・ダイナミックレンジ ★★★★☆
・デザイン ★★★☆☆
・コスト ★★★★★

ヘッドホンアンプとして絶大な人気を持つ至高の1台、GRACE design「m903」

「m903」は、USB DAC機能を備えたヘッドホンアンプ

1994年設立のGRACE designも、スタジオ機器メーカーとして定評を持つブランドだ。得意としているのはマイクプリアンプとモニターコントローラー(GRACE designの場合はインテリジェントなミキサーのことをそう呼ぶようだ)だが、その中でもひときわ人気を集めているのが、USB DAC機能付き、コンパクトサイズのヘッドホンアンプ「m903」だ。本来は、自宅スタジオなどで活用されることを想定して企画されたものだが、いまやプロユーザーだけでなく、ハイアマチュアにも絶大な支持を得る人気製品となっている。

その好評っぷりは前モデルの「m902」から受け継かれたものだが、モデルチェンジごとに着実に進化し、クオリティや使い勝手を向上させてきたことも、変わらぬ人気を保っている秘訣なのだろう。実際「m903」は、低歪&ローノイズの回路設計をさらに洗練させ、DACパートだけでもダイナミックレンジを10dBもクオリティアップさせている。また入力系では、アナログはバランス/アンバランスの両方を備え、デジタルは同軸/光、USB、AES3の4系統と豊富に取りそろえられている。なかでもUSB接続は、アシンロナス(非同期)の192kHz/24bit対応というこだわりよう。USB DACとしても十二分のクオリティを持ち合わせているのだ。さらに、出力系はアナログのみとなるものの、アンバランス(RCA)、バランス(フォン)、ヘッドホンの3系統が用意され、それぞれが独立して、0.5dBステップという細かなボリュームコントロールをできるようになっている。

入力インターフェイスとして、アナログはバランス/アンバランスの両方を搭載。デジタルは同軸/光、USB、AES3の4系統に対応。出力インターフェイスは、アンバランス(RCA)、バランス(フォン)、ヘッドホンの3系統が用意されている

とはいえ、一番の注目パートは、やはり「ヘッドホンアンプ」部だろう。フロントパネルを見ると、ヘッドホンが2つ同時に接続できることがわかるが、実はこれ、それ以外にも目的がある。ヘッドホンの左右で別々の出力につなぐ、バランス接続が可能となっているのだ。プロ用の世界でもあまり使われない手法だが、音質にとことんこだわる人には、うれしい機能でもある。

ヘッドホン端子を2つ搭載し、バランス接続が可能

実際のサウンドはというと、さすがプロ機器クオリティというべきだろう、歪みや変調をまったくといっていいほど感じない、ありのままの音がストレートに再生されているイメージだ。当然のように解像度感は高く、強弱表現も階調豊か。ただ、プロ用にありがちな堅く鋭い印象ではなく、しなやかで表現力が豊かなところが個性といえる。そういった音色傾向による効果か、使い慣れたヘッドホンが、別物とまではいわないまでも、ベストコンディションまで高められ、普段よりもずいぶん生き生きと鳴ってくれる印象となる。ヘッドホンアンプに対する負担が大きい「AKG Q701」相手となると、かなりボリュームを上げることになるが、それでも全帯域がしっかりと駆動され、躍動感あふれるサウンドが楽しめた。

いっぽうで、バランス出力のクオリティも高く、ホームオーディオ用のプリアンプ(またはセレクター)としてなかなかに優秀である点も見逃せない。まさに「憧れのプロ機器」という今回のテーマにピッタリな、ホームユースとしても大きな魅力を発揮してくれる、クオリティの高い製品だ。


総論 GRACE design m903

<オススメポイント> ヘッドホンアンプ、プリアンプとしての多機能さと確かな音質。
<ウイークポイント> プロ用機器のため、どうしても価格が高いこと。

・解像度感 ★★★★☆
・SN感 ★★★★★
・ダイナミックレンジ ★★★★★
・デザイン ★★★★☆
・コスト ★★★☆☆

試聴環境について

今回の試聴は筆者の試聴室にて行った。使用したパソコンは、Acer「AS1410」というひと昔前のごくありふれたスペックを持つノートパソコンだ。ただしUSB DACとの接続にはSAEC製の高級USBケーブル「SUS-480」(0.7m/23,100円)を使い万全を期している。またUSB DACから出力されたアナログ信号はRCAケーブルでいったんAVアンプ(パイオニア「SC-LX71」)を経由してパワーアンプ(ヤマハ「101M」)へ伝達、TAD(パイオニアのプロ用機器ブランド)の「TL-1601b」(15インチ口径のウーファー)+「TD4001」(4インチ口径のホーン型ドライバー)の2ウェイスピーカーにてサウンドクオリティをチェックした。

またヘッドホン出力に関しては、ソニー「MDR-Z1000」とAKG「Q701」の2モデルを活用して音質確認を行っている。

SUS-480

ソニー「MDR-Z1000」

AKG「Q701」

評価ポイントについて

今回の評価ポイントは、下記の5項目について表記させてもらうことにした。満点は5点。このほか音の密度感や生々しさ、熱気の高さなども評価ポイントに加えたいところだったが、それらは複数の特徴によって作り上げられている(加えて主観的なニュアンスが高い)ものであるため、文章内に表現するのみにとどめている。

・解像度感……音のきめ細やかさ
・SN感……無音時の静けさ、音が出ているときのピュアさ
・ダイナミックレンジ……音の強弱の幅広さやニュアンス表現の細やかさ
・デザイン……純粋なデザインのよさに加えて使い勝手のよさも考慮
・コスト“音質”パフォーマンス……音質のよさと金額の高さを相対値として評価


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

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