連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(ムジカ・パラディーゾ) 

ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び 第4回

ヘッドホンやスピーカー、プレーヤー、アンプなど、オーディオに関するテーマを決めて実力派製品を複数回にわたって紹介する、野村ケンジ氏のオーディオ連載「Paradiso della musica」(パラディーゾ・デッラ・ムージカ)。今回は、連載第2シリーズとなる「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」の4回目。“異業種ブランド”をテーマに、野村氏厳選のUSB DACを紹介する。

第4回 群雄割拠のなかひときわ強い輝きをはなつ異業種ブランド

PCオーディオ、なかでもUSB DACのユニークな点は、新規ジャンルゆえに多くのメーカーが参入していることだ。しかもPCアクセサリー系メーカーなど、これまでのオーディオ専業メーカーとは違った、別ジャンルをメインとする企業の姿が多数見られるのが面白い。そこで今回は、そういった新規参入メーカーの中から、注目の製品を紹介していこう。

今や新定番となりつつあるRALは秀作モデルがずらり



「RAL-24192UT1」は同軸デジタル出力を備えており、D/Dコンバーターとしても利用できる

大阪に拠点を置くPC周辺機器メーカー、ラトックシステムが、PCオーディオ系製品を中心に展開しているのが「RAL」ブランドだ。こちらには現在、USB DACやプリメインアンプ、iPod用DDC(D/Dコンバーター)、電源ユニットなど、多彩な製品がラインアップされている。なかでもUSB DACは、自作キットを含めて6製品ものバリエーションを擁する充実度を誇っている。その中から今回は、最上級モデルの「RAL-24192UT1」と、クオリティとコストパフォーマンスのバランスが絶妙な「RAL-2496HA1」を紹介しよう。


まず最上級モデルの「RAL-24192UT1」は、その名のとおり192kHz/24bit対応のUSB DACだ。Hi-Speed(480Mbps)モードで通信を行う「USB Audio Class 2.0」に対応するため、Windowsパソコンではドライバーをインストールする必要がある(MacOS X10.6以降は必要なし)ものの、データ量の多い192kHz/24bitファイルをハイクオリティに再生することができる。


また「RAL-24192UT1」は、内部に2個の高精度水晶発振モジュール(精度は+-25ppm)(22.5792MHz、24.576MHz)を搭載し、オーディオ専用クロックとして活用。Hi-Speedモードとあわせて、ジッター(時間ブレによる音質劣化)を極力廃した良質サウンドを実現している。いっぽうで、転送されてきた音楽データは、マルチスレッドと並列処理によって効率化された内部処理により、遅滞や音切れなくスムーズに再生されるというからありがたい。


出力は、アナログRCAに加え同軸デジタルも用意されているので、D/Dコンバーターとしての活用も可能だ。またバスパワーでも動作する手軽さはうれしい。外部電源入力用のDCジャックも搭載しているものの、専用ACアダプターは別売となっている。もしバスパワーでなく外部電源を利用するのなら、さらに上級の電源ユニット「RAL-PS0514」あたりも含めて導入を検討したいところだ。


そのサウンドは、SNがよいうえ、とてもダイナミック。解像度感もかなりの高さを実現しており、音楽がとてもクリアで、細部までよく見通せる。文句のつけようのない秀作だ。強いて苦言をていするなら、下位モデルとほぼ変わらないデザインが残念に思える。とはいえ音質を考えれば、かなりの満足度を得られる製品であることには間違いはない。

いっぽうの「RAL-2496HA1」は、18,000円という価格ながらも、96kHz/24bitに対応するハイコストパフォーマンス製品だ。こちらは出力がアナログRCAのみで、専用クロックの搭載もないが、USBから侵入するノイズを排除するコモンモードフィルターや静電破壊防止回路、電源部からのノイズ混入を防ぐ回路ごとに独立したフィルターなど、音質にかなり気を使った製品作りがなされている。

こちらもUSBバスパワー動作に加えて、外部電源での使用も可能となっている。またWindows OS標準ドライバーで動作する手軽さも、PCオーディオ初心者にとってはうれしい限りだ。

さすがに「RAL-24192UT1」と比較すると、SNや解像度感にかなりの違いが見られるが、ダイナミックレンジの幅広さもあって、元気で気持ちのよいサウンドが堪能できる。CDからのリッピングやiTunesのダウンロードがメインの人であれば、こちらでも十分に満足できるはずだ。コストパフォーマンス的にはかなり優秀な製品といえる。

96kHz/24bit入力に対応する高コストパフォーマンスモデル「RAL-2496HA1」


総論 ラトックシステム RAL-24192UT1

<オススメポイント> コンパクトなボディにクオリティの高いサウンド。USBバスパワー駆動もうれしい。
<ウイークポイント> かなりの高額モデルだが、音を聴くかぎり妥当といえる。

・解像度感 ★★★★☆
・SN感 ★★★★☆
・ダイナミックレンジ ★★★★★
・デザイン ★★★☆☆
・コスト ★★★☆☆


総論 ラトックシステム RAL-2496HA1

<オススメポイント> コストパフォーマンスの高さはかなりのもの。USBバスパワー&標準ドライバーの手軽さもうれしい。
<ウイークポイント> 解像度感、SN感に関しては上位モデルと明らかな差異がある。

・解像度感 ★★★☆☆
・SN感 ★★★☆☆
・ダイナミックレンジ ★★★★☆
・デザイン ★★★☆☆
・コスト ★★★★★

RAL-2496HA1

RAL-2496HA1

価格.com最安価格(2011年10月18日現在) 13,629

一見無骨なスタイルがなかなかかわいらしくて味わい深い「JADE-2」



「JADE-2」は、USB、光デジタル、同軸デジタル、アナログRCA入力に対応。セレクターやプリアンプとしても活用可能だ

ORBは、大阪府摂津市にあるジェーエイアイが展開するオーディオブランドである。そのラインアップは電源系アクセサリーやケーブル類がメインとなっているが、昨年からはPCオーディオ系の製品にも着手、「JADE」シリーズの展開をスタートさせた。


「JADE」シリーズには現在、ホームオーディオ用の「JADE-2」と「JADE-1」、そしてポータブルの「JADE to go」がラインアップされている。このうち今回は、「JADE-2」に注目したい。


238(幅)×317(高さ)×96(奥行)mmというちょっと大柄なボディを持つ「JADE-2」は、USBのほか、光デジタル、同軸デジタル、アナログRCA入力も用意。セレクターやプリアンプとしても活用できる製品だ。フロントパネルには現在の入力ソースやビットレートが表示される液晶パネルのほか、USBメモリー用の端子もレイアウト。操作ボタンも備わっていて、USBメモリー内の楽曲を、CDのように手軽に再生することができる。


音質面にもかなりのこだわりが見られる。ヘッドフォンアンプには600Ω対応のA級アンプを新開発。アナログRCA出力にはJRC製「MUSES01」を使用し、電源部には磁束の漏れや振動の少ないRコアトランスを、コンデンサーには高音質オーディオ用を採用する充実ぶりだ。また原音を忠実に再現する「Direct」、長時間のリスリングにも疲れにくい「Comfort」というサウンド傾向の切り替え機能も用意し、ユーザーの趣向にも応えられる配慮がなされている。なお、対応するビットレートは、USB入力は96kHz/24bit、光/同軸デジタル入力は192kHz/24bitまでとなっている。


一聴してすぐにわかるのがSNのすばらしさだ。ノイズレベルがかなり押さえ込まれているため、音楽の微妙なニュアンスまでよく伝わってくる。解像度が高く、空間表現が良好なため、演奏がとてもリアルに感じる。思わず音楽に引き込まれる、魅力的なサウンドだ。DACにAKM社製のものを採用していることもあってか、解像度感はかなり高い。逆に、ヌケの強い高域が多少鼻につく人がいるかもしれない。しかしそういった場合は、モードを「Comfort」にすればまず大丈夫。ダイレクト感は多少弱まるが、聴き心地のよいサウンドが堪能できる。


さらに、音質に加えてその外観も魅力だ。遠目からだと無骨にも見えかねないデザインだが、作りはかなりていねいで、質感も良好。安っぽさはみじんもない。さらに70年代風ともいえるネオクラシックなデザインは、デスクの上やラックの中では確かな個性を主張してくれるので、見栄え的にも所有する満足度は高い。音もデザインも、なかなかのスグレものといえる。


ちなみに兄弟モデルの「JADE-1」は、「JADE-2」から表示パネルとUSBメモリー対応が省かれているが、基本機能は変わらない。よりコストパフォーマンスを重視したいという人は、こちらをチョイスするのもいいだろう。


総論 ORB JADE-2

<オススメポイント> 解像感、SN感にすぐれた魅力的なサウンド。ていねいに作られた筐体も好感が持てる。
<ウイークポイント> 製品のサイズが大きく、多少置き場所を選ぶこと。

・解像度感 ★★★★☆
・SN感 ★★★★★
・ダイナミックレンジ ★★★★☆
・デザイン ★★★★★
・コスト ★★★★☆

ORB JADE-2

ORB JADE-2

価格.com最安価格(2011年10月18日現在) 118,800

試聴環境について

今回の試聴は筆者の試聴室にて行った。使用したパソコンは、Acer「AS1410」というひと昔前のごくありふれたスペックを持つノートパソコンだ。ただしUSB DACとの接続にはSAEC製の高級USBケーブル「SUS-480」(0.7m/23,100円)を使い万全を期している。またUSB DACから出力されたアナログ信号はRCAケーブルでいったんAVアンプ(パイオニア「SC-LX71」)を経由してパワーアンプ(ヤマハ「101M」)へ伝達、TAD(パイオニアのプロ用機器ブランド)の「TL-1601b」(15インチ口径のウーファー)+「TD4001」(4インチ口径のホーン型ドライバー)の2ウェイスピーカーにてサウンドクオリティをチェックした。

またヘッドホン出力に関しては、ソニー「MDR-Z1000」とAKG「Q701」の2モデルを活用して音質確認を行っている。

SUS-480

ソニー「MDR-Z1000」

AKG「Q701」

評価ポイントについて

今回の評価ポイントは、下記の5項目について表記させてもらうことにした。満点は5点。このほか音の密度感や生々しさ、熱気の高さなども評価ポイントに加えたいところだったが、それらは複数の特徴によって作り上げられている(加えて主観的なニュアンスが高い)ものであるため、文章内に表現するのみにとどめている。

・解像度感……音のきめ細やかさ
・SN感……無音時の静けさ、音が出ているときのピュアさ
・ダイナミックレンジ……音の強弱の幅広さやニュアンス表現の細やかさ
・デザイン……純粋なデザインのよさに加えて使い勝手のよさも考慮
・コスト“音質”パフォーマンス……音質のよさと金額の高さを相対値として評価


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

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