連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(ムジカ・パラディーゾ) 

ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び 第1回

オーディオ・ビジュアル・ライターの野村ケンジ氏が、ヘッドホンやスピーカー、プレーヤー、アンプなど、毎回、オーディオに関するテーマを決めて、デジタルオーディオ時代の実力派製品を複数回にわたって紹介する連載「Paradiso della musica」。前回は「初心者にオススメしたい高級ヘッドホン入門」をテーマに高品位なカナル型ヘッドホンを紹介したが、連載第2シリーズとなる今回のテーマは「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」。計6回(予定)にわたって、野村氏がオススメする良音質のUSB DACを紹介する。

いままさにPCオーディオが、そしてUSB DACが花盛り!

オーディオ・ビジュアル・ライターの野村ケンジ氏

「音楽の配布が光ディスクからインターネット配信に代わり、今後はパソコンがオーディオシステムのメインになる」と言われ始めてはや10年がたつが、昨年あたりからようやく現実味を帯びた雰囲気となってきた。いまや「iTunes」や「着うた」などの音楽配信が確実なシェアを示すいっぽうで、オンキヨーの高品位音楽配信サービス「e-onkyo」などポストCDの本命といえる高音質配信(CDの44.1kHz/16bitを超えた192kHz/24bitや96kHz/24bit)も拡充してきており、パソコンありきの音楽再生が一般的にも認知度を高めつつあるのだ。


それに呼応するかのように、あるパソコン周辺機器にも大きな注目が集まった。何を隠そう、それが「USB DAC」だ。残念ながらパソコンの世界では、処理能力こそ日進月歩の進化を続けているものの、ことサウンドに関してはなおざりにし続けてきた。「数値に表れにくいものは後回しにする」風潮は工業製品における常なので、パソコンだけでなく、クルマも液晶テレビも似たような傾向はあるが、パソコンの場合は、誰もが一聴でわかる低レベルな音質と、高音質配信が再生できないという機能的な弱点とが相まって、「ちゃんとPCオーディオが成立する製品」を求めるニーズがここへ来て急激に高まってきた。そこにピタリとはまったのがUSB DACなのである。


一部の製品にはいまだにDTM用のマニアックさが残るものの、ただケーブルをつなぐだけで良質なサウンドを披露してくれるUSB DACは、たちまちのうちに人気を高めていった。いっぽうで、パーツを寄せ集めればある程度のクオリティが確保できる開発のしやすさや、未開拓ジャンルという敷居の低さも相まって、多くのメーカーがUSB DAC市場に参入、いまの群雄割拠の様相を呈するまでになったのである。

ただ、これだけ多くのメーカーが参入し、多数の製品がちまたにあふれてくると、選ぶユーザーのほうもひと苦労だ。なにせヘッドホンやイヤホンと違い、USB DACが試聴できる家電量販店はいまだに少なく、それどころかプロオーディオをメインの流通ルートにしているメーカーや、全く別ジャンルを本職とする新規メーカーなど、入手が困難な製品が山のようにあるのである。

ということで、ここでは数多あるUSB DAC製品の中でも筆者が実際のサウンドを確認し、音質とともに機能的にも個性が光るオススメ製品を紹介していこう。なお、今回の記事では、多くの人が家庭でもヘッドホンを活用する現実を考慮して、ヘッドホン出力があるものに製品を限定、その実力のほども重視した。またUSB DDC(パソコンの音声信号を一般的なデジタルオーディオ信号に変換する機能を持つもの)も今回のチョイスからは外しているので、その点はあらかじめご了承いただきたい。

試聴環境について

今回の試聴は筆者の試聴室にて行った。使用したパソコンは、Acer「AS1410」というひと昔前のごくありふれたスペックを持つノートパソコンだ。ただしUSB DACとの接続にはSAEC製の高級USBケーブル「SUS-480」(0.7m/23,100円)を使い万全を期している。またUSB DACから出力されたアナログ信号はRCAケーブルでいったんAVアンプ(パイオニア「SC-LX71」)を経由してパワーアンプ(ヤマハ「101M」)へ伝達、TAD(パイオニアのプロ用機器ブランド)の「TL-1601b」(15インチ口径のウーファー)+「TD4001」(4インチ口径のホーン型ドライバー)の2ウェイスピーカーにてサウンドクオリティをチェックした。

またヘッドホン出力に関しては、ソニー「MDR-Z1000」とAKG「Q701」の2モデルを活用して音質確認を行っている。

SUS-480

ソニー「MDR-Z1000」

AKG「Q701」

評価ポイントについて

今回の評価ポイントは、下記の5項目について表記させてもらうことにした。満点は5点。このほか音の密度感や生々しさ、熱気の高さなども評価ポイントに加えたいところだったが、それらは複数の特徴によって作り上げられている(加えて主観的なニュアンスが高い)ものであるため、文章内に表現するのみにとどめている。

・解像度感……音のきめ細やかさ
・SN感……無音時の静けさ、音が出ているときのピュアさ
・ダイナミックレンジ……音の強弱の幅広さやニュアンス表現の細やかさ
・デザイン……純粋なデザインのよさに加えて使い勝手のよさも考慮
・コスト“音質”パフォーマンス……音質のよさと金額の高さを相対値として評価

「ヘッドホンの音も重視したUSB DAC選び」
第1回 “とりあえず始めたい”人にピッタリのコンパクトモデル

外付けUSB DACは音がよいと聴くけれど種類も数多く価格帯も幅広く、どのあたりを選べばよいのかわからず困ってしまう、という人も多いはず。そこで第1回は、この製品以上のクオリティと価格帯を選べば間違いはない、というUSB DACの指標となりうる製品を紹介しよう。

コンパクトサイズなれど実力は一級品レベルの「Icon uDAC-2」

高さ68×幅21×奥行き42mmという名刺ほどのミニサイズながら、最高96kHz/24bitのビットレート/サンプリングレートにまで対応する高い機能性を持ち合わせているのが、デジタルアンプで定評のある米NuForce(ニューフォース)の「Icon uDAC-2」だ。また音声出力として、RCA、ヘッドホンのほか、同軸デジタルを備えている点も特徴。USB DACだけでなく、USB DDCとしても活用することができる。

音質に関しても、Icon uDAC-2はかなりのこだわりを持っている。USBデータ受信とDA変換にそれぞれ専用のICを割り当てることで、USBレシーバーに内蔵されたDACを使用するローコスト製品とは一線を画すクオリティを実現。加えてデータレベルとオーバーサンプリングフィルターステージでの2重のジッターエラー低減メカニズムや、低音量時にも左右の音量差が生じないように改善した高精度音量調整機能などにより、PCオーディオを単体CDプレーヤーと同等レベルにまでグレードアップさせているという。

コンパクトサイズを実現した「Icon uDAC-2」

同軸デジタル出力も装備。電源はUSBバスパワー駆動となる

はたして実際のサウンドはというと、謳い文句どおりなかなかの完成度。解像度感はそこそこだが、荒々しさはなく、どちらかといえばていねいに聴こえる。帯域バランスも自然で、SN感もほどよく上質なため、演奏が細かいニュアンスまできちんと見えてくる。そのことから、アコースティックギターは胴鳴りが心地よく響き、ピアノはホールの反響が優しく主音に重なって、幾分やわらかいタッチに聴こえる。フォルテッシモこそ迫力に欠ける嫌いはあるものの、フォーカス感やキレが悪いわけではない。あくまでもジェントルかつ美音主義なのだ。音楽に包まれた心地よい時間を過ごしたい人には、ピッタリのサウンドといえる。

唯一残念なのは、ヘッドホン出力の駆動力だ。AKG「Q701」を接続してみたところ、ボリュームを最大にしても音量(というよりは中低域の押し出し感といった方が正解かもしれない)が満足いくレベルには達しなかった。とはいえカナル型イヤホンや国産オーバーヘッド型ヘッドホンでは問題なかったので、AKGやゼンハイザーなど、ヨーロッパ製の高インピーダンスヘッドホンを愛用している人のみ注意すればよい。

価格といいサウンドクオリティといい、PCオーディオの可能性を知る入門機としては相当の優等生といえるだろう。どちらかといえば、優秀すぎて今後の選択基準が相当厳しくなってしまうことのほうが心配かもしれない。またUSBバスパワー駆動なので、屋外へ持ち出す用のサブ機として活用するのもいいだろう。


総論 NuForce Icon uDAC2

<オススメポイント> コンパクトなサイズとバスパワー駆動によるポータブル性と、良好なサウンドクオリティを両立。
<ウイークポイント> さらに上質なものを求めようとするとかなり高額になってしまう出来のよさゆえの悩み。

・解像度感 ★★★☆☆
・SN感 ★★★★☆
・ダイナミックレンジ ★★★☆☆
・デザイン ★★★★★
・コスト ★★★★☆


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

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