連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(ムジカ・パラディーゾ) 

初心者にオススメしたい高級ヘッドホン入門 第6回&まとめ

「初心者にオススメしたい高級ヘッドホン」の最終回となる今回は、知る人ぞ知るブランドであり、近年、日本への正規輸入が本格的に開始されたWestone(ウェストン)のカナル型ヘッドホンを紹介。あわせて、連載のまとめとして、高級ヘッドホン選びのポイントや使いこなしのプランも紹介しよう。

Westone「UM3X」 高い実力を備えた3ドライバー搭載モデル

「Westone」という名前を聞いて、どんなブランドか詳細に知っている人はごく少数だろう。なぜならば、Westoneは、医療用や工業用、ステージモニターなどプロフェッショナル用途のカスタムフィットイヤホンを中心に展開してきたメーカーだからだ。コンシューマー向け製品をラインアップしたのはここ数年のこと。しかし、SHUREの「E5」やUltimate EarsのステージモニターなどのOEMも手がけたと主張しているだけあって、その実力は確かなものだ。

現在のコンシューマー向けラインアップは、メインとなる「Westoneシリーズ」と、ステージモニター系の「UMシリーズ」の2系統7機種となる。最近発売された「Westone4」は、バランスド・アーマチュア・ドライバーを4基も搭載して大いに注目を集めているが、ここではUMシリーズ、なかでも3ドライバー搭載の「UM3X」をオススメしたい。

Westone「UM3X」

Westone「UM3X」

UM3Xは、とにもかくにも、悪癖や歪みを極限まで排除したクリアなサウンドがすばらしい。バランスド・アーマチュアを使用する3ドライバー製品といえば、高解像度感や中域の厚み、(バランスド・アーマチュアとは思えない)低域の充実度などをアピールする製品が多いが、UM3Xはそういった押しの強さはほとんど感じられず、ただただ実直に音楽を奏でてくれる。肩の力が抜けたサウンドとでもいえばよいのだろうか。高域も強過ぎることなく鋭さも控えめ、それでいてキレはよくグルーブ感も高い。筐体がかなり軽量に作られているためか、全体的にライト感覚とも取れるサウンド傾向だが、中域の充実感やきめ細やかさはバランスド・アーマチュア型に手慣れたWestoneならではの絶妙さだろう。


総論 Westone UM3X

<オススメポイント> 肩の力の抜けた自然なバランスのサウンドが魅力。
<ウイークポイント> 筐体が軽量なためか、軽めなサウンドである点は好みの分かれるところ。

解像度感 ★★★★☆
帯域バランス ★★★★☆
帯域過渡特性 ★★★★☆
高域の質感 ★★★★★
低域の量感 ★★★★☆
グルーブ感 ★★★★☆
装着感 ★★★★★
デザイン ★★★★☆
コスト“音質”パフォーマンス ★★★☆☆

まとめ 高級モデルだからこそ使いこなしでも大いに楽しもう

さて、ここまで6回の連載で、11メーカー・18機種の初心者にオススメしたい高級カナル型ヘッドホンを紹介した。もちろんピックアップした製品以外にも、すばらしいカナル型ヘッドホンはたくさんある。皆さんにもできるだけ多くの製品を実際に聴き、お気に入りの1台に出会ってほしいものだ。


そこで最後に、オススメ製品とは別に、カナル型ヘッドホン製品選びのコツのほか、購入後の使いこなし方法と、ヘッドホンを存分に楽しむ提案をいくつか紹介しよう。


まず製品選びについてだが、価格.comのクチコミ掲示板・レビューで実ユーザーの声を参考にするのはもちろんのこと、試聴が可能なお店が近くにあるなら、自分のポータブルプレーヤーを持って行って、数多くの製品を聴きまくってほしい。なぜなら、ブランドや話題性だけで製品を選ぶと、自分の好みとは合わずに、「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性があるからだ。この連載で紹介した製品は、どれもすばらしいクオリティと特徴を持ち合わせているものの、すべてが個人の好みと合致するわけではない。決して安い買い物ではないからこそ、納得がいくまでじっくり何度でも試聴しよう。

そして購入後は、まずは鳴らし続けることが重要だ。購入した製品は、当たり前だが新品であるため、本来の実力を発揮するまでに時間がかかる。バランスド・アーマチュア型で2〜3のドライバーを使っている製品などは、1か月(通勤などで)聴き続けてやっと本領を発揮し始めるものもあるくらい。数日使っただけで「こんなはずじゃなかった」と諦めず、とにかく聴き続けよう。

それでも数か月から1年も経つと、以前は一番気に入っていた音が、だんだんもの足りなくなってくる場合もあるだろう。そういった時は、CDをWAVなどの非圧縮形式でリッピングしてみたり、プレーヤーを代替するなど目先を変えてもいいが、より効果的なのはヘッドホンアンプの導入だ。カナル型はオーバーヘッド型に比べて能率は高い傾向にあるものの、高級モデルは効率よりも音質が優先された製品。当然パワーアンプは良質であればあるほどいい。相性問題やコストパフォーマンスの問題もあるため、一概に高価なほどよい結果が出るとはいえないが、それゆえに、「理想のヘッドホンアンプ」を見つけるという別の楽しみも味わえる。そう、高級ヘッドホンは買ったらハイ終わりとはならない。その後もいろいろと楽しませてくれる、2度も3度もおいしい存在なのだ。

そろそろまとめにしよう。実のところ、この連載をスタートするまで仕込みに半年以上の日々を費やしてしまった。その間に試聴したヘッドホンの数は100機種を軽くオーバーしている。そして今回ピックアップした製品は、どれも1か月以上の期間手元に置き、ファーストインプレッション、屋外での試聴、さらに数回の繰り返し試聴を行ったのち、最終的な掲載を判断している。借用させていただいたメーカーには、だいぶ迷惑をかけたと思う。趣旨を理解して長期貸し出しに賛同してくれた各社にこの場を借りてお礼を述べたい。

いっぽうで、メーカーから送られてくるサンプルは、未開封の新品も多く、また開封されていてもまだエージングが完了していない製品も少なからずあった。そのため、それらすべてに納得のいく期間のエージング(最長でまる5日間続けた製品もある!)を行い、その後に試聴を開始している。はっきり言って、ここまで手間をかけたカナル型ヘッドホン記事はそうそうないだろうと、筆者自身も製品のピックアップには確信を持っている。とまあ、そこまでは言い過ぎだが、より現実的な記事には仕上がったと思う。ぜひとも、末永く楽しめる製品を選び出す参考として活用してほしい。

評価ポイントについて

カナル型ヘッドホンに関しては、下記の9項目の評価ポイントを表記させてもらうことにした。満点は5点。このほか、音の密度感やボーカルのクリアさ、音の生々しさや熱気の高さなども評価ポイントに加えたいところだが、それらは複数の特徴によって作り上げられているメリットのため、文章内に表現するに留めている。

・解像度感……音の細やかさ
・帯域バランス……低音、中音、高音のバランス
・帯域過渡特性……ピークやディップなど音楽を阻害する要素の少なさ
・高域の質感……高域方面のノビや倍音成分のそろいのよさなどを総合評価
・低域の量感……ここでは絶対的ボリュームより最低域へのノビや質感を重視して評価
・グルーブ感……ノリのよさを示す項目で各帯域のタイミングがそろうと高評価となる
・装着感……装着に関する手間や違和感の少なさ
・デザイン……デザインのよさに加えて音漏れなどの機能性も考慮
・コスト“音質”パフォーマンス……音質の良さと金額の高さを相対する値として比較評価


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

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