連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

野村ケンジの「Paradiso della musica」(ムジカ・パラディーゾ) 

初心者にオススメしたい高級ヘッドホン入門 第2回

ヘッドホンやスピーカー、プレーヤー、アンプなど、オーディオに関するテーマを決めて実力派製品を複数回にわたって紹介する、野村ケンジ氏のオーディオ連載「Paradiso della musica」(ムジカ・パラディーゾ)。今回のテーマは「初心者にオススメしたい高級ヘッドホン入門」の第2回目。野村氏厳選のカナル型モニターイヤホンを紹介する。

第2回 モニター系ヘッドホンの雄

今やカナル型ヘッドホンをラインアップするメーカーは数多くあるが、なかでも高い注目を集めているのが、プロ用のモニターヘッドホンを手がけるブランドであろう。ということで今回は、オーバーヘッド型のスタジオモニターからカナル型へと行き着いたAKGと、ステージ用のカスタムイヤホンから一躍カナル型のトップブランドになったUltimate Ears(アルティメット・イヤーズ)について、オススメ商品を紹介しよう。

AKG「K370」 AKGサウンドを堪能できる高コストパフォーマンスモデル

AKG「K370」

AKGといえば、世界中のレコーディング・スタジオや放送局などで使われている、プロ用のヘッドホンやマイクが有名だ。なかでもオープンエアー型(ハウジングに開放部分のある)のヘッドホンは、いまやスタジオモニターとしてだけでなく、パーソナルユースの製品としても人気を集めている。かくいう筆者も、学生時代にバンドをやっていたこともあり、AKGはあこがれのブランドのひとつだった。


近年AKGは、コンパクトタイプのヘッドホンなどコンシューマー向けの製品を積極的に展開したこともあり、いまや一般の人にも知られるメーカーとなっている。幅広い種類と価格のモデルがそろう中、モニター系が変わらずに一番人気という印象はあるが、最近は某アニメ番組の影響で、フラッグシップの「K701」が一躍有名になったというエピソードもある。


そんなAKGが、カナル型イヤホンを手掛けるようになったのはつい最近のことだ。とはいえ、さすがAKGというべきか、その実力はファーストモデルとは思えないレベルに達している。なかでもオススメしたいのが、トップエンドの「K370」だ。

弟機の「K340」もなかなかグルービーで楽しいサウンドを聴かせてくれるが、それでも「K370」をオススメするのは、音質的なアドバンテージはもちろん、よりAKGらしいサウンドキャラクターであることと、音楽ジャンルを選ばない懐の深さを持ち合わせていることからだ。高域が少々強めに感じる時もあるが、その分明瞭度は高く、さらに解像度の高さと相まって、活気に満ちたフレッシュなサウンドが堪能できる。各帯域のタイミングのそろいもよいためグルーブ感も上々で、演奏者の熱気やノリがダイレクトに伝わってくる。価格(2010年12月16日現在の価格.com最安価格で8,980円)を考えると、このパフォーマンスはなかなかだと思う。


総論 AKG K370

<オススメポイント> モニター的な特性を備えながらもノリの良い楽しげな音楽が存分に堪能できる。
<ウイークポイント> モニター系ならではの高域特性が人によっては気になるかもしれない。

解像度感 ★★★★☆
帯域バランス ★★★☆☆
帯域過渡特性 ★★★★☆
高域の質感 ★★★★☆
低域の量感 ★★★☆☆
グルーブ感 ★★★★★
装着感 ★★★☆☆
デザイン ★★★★☆
コスト“音質”パフォーマンス ★★★★☆

Ultimate Ears「UE600」 最上位「TripleFi 10」に近いサウンドキャラクターに注目

Ultimate Ears「UE600」

スタジオモニターを得意とするAKGに対し、カスタムフィットイヤホンなどステージモニター系ヘッドホンのブランドとして絶大な人気を誇っているのがUltimate Earsである。こちらは第1回で紹介した2ブランドと同様、高級ヘッドホンブームの立役者となった存在でもあり、現在の幅広いラインアップによって、多くの人から注目されている人気ブランドでもある。


Ultimate Earsの名を聞いて筆者が真っ先に浮かぶのは、カスタムフィットイヤホンの「18Pro」だ。バランスド・アーマチュア型ドライバーを6つ採用する3ウェイ構成の18Proは、ディップやピークは全くといっていいほど感じさせない、かつ一切のカラーレーションが排された、ストレートで自然なサウンドが特徴だ。聴感上の再生周波数帯域も理想的なくらいに超ワイドで、高域がストレスなくどこまでも伸び上がっていく。20Hz〜18kHzというスペックがにわかに信じられないほど、絶妙な特性カーブを持ち合わせている。


音質的には理想的な「18Pro」だが、1350ドルという価格や、耳型をとってそれを本社まで送りオーダーメイドしなければならない手間を考えると、さすがに一般的とはいえない(マニアにはおすすめできるが)。そこで、数ある同社製品のなかから今回は「UE600」を推薦しようと思う。

Ultimate Earsといえば、プロダクトモデルとして最上位の「TripleFi 10」があまりにも有名だ。実際この「TripleFi 10」は、昨今の高級ヘッドホンブームを代表する名機であり、躍動感に富んだリアルサウンドはとても魅力的。だが、運よく下位モデル、なかでも、今回紹介するUE600などのバランスド・アーマチュア型ドライバーを採用する製品たちはいずれも、この「TripleFi 10」とサウンドキャラクターが近いことから、解像度感や帯域特性にさえ気にならなければ十分に満足を得られるレベルにあるのだ。

実際「UE600」のサウンドも、1ドライバーとは思えないほど音圧感と帯域幅の広さが見事に両立されている。低域の量感も十分だ。ドライバーがバランスド・アーマチュア型であるため、当然のごとく中域は密度感が高く、繊細な表現も上位モデルほどではないにしろなかなか上手だ。歌声に厚みがあって、感情表現が豊かなのは好感が持てる。音楽の楽しさをしっかりと伝えてくれる点において、高級ヘッドホン入門者にとってベストな製品といえるだろう。

Ultimate Earsのカスタムフィットイヤホン「18Pro」


総論 Ultimate Ears UE600

<オススメポイント> Ultimate Earsならではの素性のよい帯域バランスは健在。低域の量感も充分。
<ウイークポイント> 高域にわずかなクセあり。また解像度に不満を持つようであれば上位モデル選択が賢明。

解像度感 ★★★☆☆
帯域バランス ★★★★★
帯域過渡特性 ★★★☆☆
高域の質感 ★★★★☆
低域の量感 ★★★★☆
グルーブ感 ★★★☆☆
装着感 ★★★☆☆
デザイン ★★★☆☆
コスト“音質”パフォーマンス ★★★★☆


総論 Ultimate Ears 18PRO(参考)

<オススメポイント> イヤホンでここまでのナチュラル&ワイドレンジサウンドを実現している実力の高さはスゴイ。
<ウイークポイント> カスタムゆえにオーダーが手間。価格も“プロ”仕様。

解像度感 ★★★★★
帯域バランス ★★★★★
帯域過渡特性 ★★★★★
高域の質感 ★★★★★
低域の量感 ★★★★★
グルーブ感 ★★★★☆
装着感 ★★★★☆
デザイン ★★★★☆
コスト“音質”パフォーマンス ★★☆☆☆

評価ポイントについて

カナル型ヘッドホンに関しては、下記の9項目の評価ポイントを表記させてもらうことにした。満点は5点。このほか、音の密度感やボーカルのクリアさ、音の生々しさや熱気の高さなども評価ポイントに加えたいところだが、それらは複数の特徴によって作り上げられているメリットのため、文章内に表現するに留めている。

・解像度感……音の細やかさ
・帯域バランス……低音、中音、高音のバランス
・帯域過渡特性……ピークやディップなど音楽を阻害する要素の少なさ
・高域の質感……高域方面のノビや倍音成分のそろいのよさなどを総合評価
・低域の量感……ここでは絶対的ボリュームより最低域へのノビや質感を重視して評価
・グルーブ感……ノリのよさを示す項目で各帯域のタイミングがそろうと高評価となる
・装着感……装着に関する手間や違和感の少なさ
・デザイン……デザインのよさに加えて音漏れなどの機能性も考慮
・コスト“音質”パフォーマンス……音質の良さと金額の高さを相対する値として比較評価


ライター/野村ケンジ

ホームシアターやカーオーディオ、音楽・映像関連、クルマ分野など、幅広いジャンルで活躍するフリーライター。100インチスクリーン+TADモニターで6畳間極小ホームシアターを自宅で実践するなど、実験的な試みにも積極的にチャンレンジするこだわり派。サウンドコンテストの審査員なども担当している。

ページの先頭へ