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高音質イヤホンを手がける「音茶楽」とコラボレーション 

卵形スピーカーのOlasonicからカナル型イヤホン「TH-F4N」が登場

東和電子と音茶楽のコラボレーションで生まれたカナル型イヤホン「TH-F4N」

ここ数年のPCオーディオ市場を盛り上げてきたメーカーのひとつである東和電子が、ついにヘッドホン・イヤホン市場に参入する。東和電子は2013年8月7日、同社初のイヤホン製品となるカナル型イヤホン「TH-F4N」を発表した。ユニークな卵型キャビネットのPCスピーカーや、超小型の単品コンポーネント「NANOCOMPO」シリーズなどと同様、「Olasonic」ブランドとして提供される製品だが、これまでと異なるのは、他ブランドとのコラボレーションになっていること。独自技術を使った高音質イヤホンを開発・販売するガレージメーカー「音茶楽(OCHARAKU)」とのコラボレーションで生まれたモデルとなっているのだ。


「TH-F4N」の正式なブランド名は「音茶楽×Olasonic」のダブルネーム。2013年10月上旬の発売予定で、市場推定価格は48,800円前後となっている。なお、音茶楽の製品は、基本的には、ヘッドホン・イヤホンやAV機器を販売するフジヤエービック、もしくは自社店舗(東京・世田谷の経堂)での展開となっているが、「音茶楽×Olasonic」の「TH-F4N」は、大手家電量販店や通販サイトでも販売されるとのことだ。


今回、新製品の発表に先立って実機を試すことができたので、東和電子への取材から得た情報も交えながら、「TH-F4N」の特徴紹介と音質インプレッションをお届けしよう。

「Flat4-玄(KURO)」をベースにOlasonicらしいカスタマイズを実施

東和電子初のカナル型イヤホン「TH-F4N」は、音茶楽の最新モデル「Flat4-玄(KURO)」をベースにしたモデルとなっている。「Flat4-玄(KURO)」の音茶楽店舗での販売価格は42,000円で、さまざまなヘッドホン・イヤホン製品を販売するフジヤエービックでも人気のモデルだ。今回の「TH-F4N」は、東和電子からのオーダーに応える形で、音茶楽がカスタマイズして作られたものとなっている。ちなみに、「TH-F4N」には、音茶楽が手がけた製品であることを示す「Flat4-涛(NAMI)」というモデル名も付けられている。

音茶楽は2010年の会社設立以降、独自技術を採用する高音質なカナル型イヤホンを開発してきたガレージメーカーだ。音茶楽の「Flat4」シリーズは、共振を抑える独自技術を採用し、密閉型ながらも開放型のような音の広がりを実現。他にはないサウンドを楽しめる製品としてヘッドホン・イヤホンマニアから高い評価を受けている。今回、音茶楽と東和電子のコラボレーションが実現したのは、東和電子が、音茶楽のイヤホンの素性のよさと、開発力の高さにほれ込んだことによるもの。また、音茶楽の開発者である山岸亮社長が、会社設立前にソニーでヘッドホン・スピーカーの開発を手がけていたことも大きい。東和電子にも、山本喜則社長や、Olasonic事業室の川崎博愛氏など、元ソニーのオーディオ事業担当者・開発者がいて、卵形スピーカー「TW-S7」を発売したときから音茶楽の店舗で設置してもらうなど、お互いを知る存在であったという。「元ソニー」のつながりもあって実現したコラボレーションとなっているのだ。

では、2社のコラボレーションによってどういうカスタマイズが行われたのであろうか? 東和電子の川崎氏は「具体的に何をカスタマイズしたかは公表できない」としながらも、「振動(共振)のコントロールに注力した」と答えてくれた。単純に共振を抑えるのではなく「残すところは残す」(川崎氏)のがポイントで、スペックよりも聴感を重視し、音茶楽が製作した試作機の試聴・フィードバックを繰り返すことで、空間の広がりや音の自然さなど、Olasonicらしさを追求したカスタマイズに仕上がったとのこと。このあたりは、スピーカー開発で培ってきたノウハウを生かした部分で、開発には、小型コンポーネント「NANOCOMPO」シリーズの開発担当者もかかわっているとのこと。その結果、「TH-F4N」は、見た目だけでなく、出力音圧レベルや周波数特性、最大入力などの物理特性もベースモデル「Flat4-玄(KURO)」と変わらないまま、ベースモデルとはひと味異なるサウンドのイヤホンに仕上がったとのことだ。

ケーブルのジョイント部には「音茶楽」のロゴが入っている

プラグ部には「Flat4」のブランドロゴと、日本製であることを示す「JAPAN」の文字が

 

「TH-F4N」は、音茶楽の製品パッケージを流用。「音茶楽×Olasonic」のブランドロゴが入ったステッカーが貼られている

 

音茶楽独自の「ツイン・イコライズド・エレメント方式」で不要な共振を抑制

続いて、「TH-F4N」のハードウェア的な特徴を見ていこう。音茶楽のベースモデル「Flat4-玄(KURO)」とほぼ同じ内容となっている。最大の特徴は、音茶楽独自の「ツイン・イコライズド・エレメント方式」を採用し、「耳にやさしく心地よい音」を実現していることだ。

一般的に耳から入った音は、鼓膜に届くまでに、外耳道の閉管共振により3kHz前後および10kHz前後の周波数で音圧が上昇する。そこに密閉型カナル型イヤホンを装着すると、外耳道の両側が塞がれるようになるため、共振モードが変わる。結果、ピークが6kHz前後および12kHz前後に移るのだが、問題は、高域の刺さるような音の原因となる6kHzの共振だ。一般的なカナル型イヤホンは、音響抵抗を用いて高い周波数の音を減衰させることで6kHzの共振を抑えているのだが、同時に10kHz以上の超高域も減衰してしまうので、そのままでは響きや広がりのない音になってしまう。音響抵抗は中高域の音圧を全体的に低下させてしまうため、うまくバランスを取ってチューニングする必要があるのだ。

音茶楽の独自技術「ツイン・イコライズド・エレメント方式」は、背面対向で配置された2つのドライバーエレメント(内側のプライマリーエレメントと、外側のセカンダリーエレメント)に、「位相補正パイプ」を組み合わせたものになっている。ユニークなのが、ハウジングの上部を囲むように配置されている「位相補正パイプ」。このパイプは、2つのドライバーエレメントを連結する構造になっており、セカンダリーエレメントから出る音をプレイマリーエレメントから出る音につなげる役目を担っている。ポイントは、2つのエレメントの経路差を外耳道の長さに合わせることで、外耳道の閉管共振を抑制する構造になっていること。6kHz前後では2つのエレメントからの音が逆相になるため、6kHz前後の共振を抑えることができるのだ。また、10kHz前後の音は位相補正パイプを通るうちに減衰するので、プライマリーエレメントから出る10kHz以上の音は損なわれない。結果、10kHz以上はそのままに、6kHz前後の不要な共振を抑えた「耳にやさしく心地よい音」を実現しているのだ。

また、「ツイン・イコライズド・エレメント方式」は、10mm径のダイナミック型ドライバーユニットを2つ並列に駆動するのも見逃せない。13.5mm径相当のドライバーと同等の振動板面積を確保しており、低域のドライブ力にすぐれるのだ。さらに、背面対向配置により、振動系の反作用による共振を抑制できるのも特徴。メカニカルなアースを実現し、重厚な低音とクリアで繊細な高音が得られるという。

加えて、「TH-F4N」は、センターキャビネットに、制振効果のあるM2052制振合金粉体塗料による防振処理を実施。あわせて、位相補正チューブに防振塗装を施すことで、かすかな余韻まで再生できるという。

このほか、最大エネルギー積400 kJ/m3(50MGOe)の強力なネオジウムマグネットを搭載するうえ、銅メッキ処理を施したプレートとヨークには電磁純鉄を採用し、強力な磁気回路を構成。振動板はタンジェンシャルレス振動板で、歪み感の少ないクリーンな中高音域を実現する。イヤーチップには、コンプライ社の低反発ポリウレタンチップを採用している。

音茶楽の独自技術「ツイン・イコライズド・エレメント方式」。2つのドライバーエレメントを背面対向で配置し、それらを「位相補正パイプ」でつなぐ構造となっている

 

ノズルは少し内側に角度の付いた形状となっている。ノズルの穴は比較的大きい

 

2つのドライバーが位置する部分に空気穴が設けられている

 

コンプライ社の低反発ポリウレタンチップ。MサイズとLサイズが付属する

 

「TH-F4N」を装着したイメージ

音質のファーストインプレッション

続いて、「TH-F4N」の音質についてのファーストインプレッションを掲載する。携帯オーディオプレーヤーやヘッドホンアンプを使って、ハイレゾ音源も交えながら試聴してみた。なお、これはベースモデル「Flat4-玄(KURO)」も同じだが、「TH-F4N」は、エイジングによって音が変わるイヤホンになっているとのこと(50時間くらいで変わり始めるとのこと)。今回試聴したのは100時間のエイジングを行ったものとなっている。

「TH-F4N」で音楽を聴いてみてすぐに感じるのは、他のイヤホンにはない独特のサウンドであることだ。10kHz前後の音がスポイルされていないのが大きいのだと思うが、中高域のクオリティが高く、クリアで伸びのある音を楽しめる。高音が破綻する直前まで鳴り切ってくれる感じだ。さらに、楽曲にもよるが、「TH-F4N」は、刺さるような音はほとんど感じない。S/Nがよく、中高域の解像度感が高いのもポイントだ。低域は、やや腰高な帯域バランスに負けているように感じることもあるが、必要な量は出ている。量感たっぷりに出るほうではなく、楽曲のバランスを損ねないで鳴ってくれるイメージだ。また、密閉型とは思えない音の広がり方をするのも、このイヤホンの特徴。音場が広く、音が響いている空間を感じ取ることができる。

さらに、このイヤホンでもっとも評価したいのは、中高域の細やかな表現力を持ちながらも、曲のダイナミズムが失われないこと。相反する要素であるが、このイヤホンは両者が共存している。非常に生々しいサウンドを再現するイヤホンで、アコースティックギターなど弦楽器は、ライブ感を保ちながら、ギターのピッキングの細かいニュアンスまで再現する。ボーカルメインの楽曲では、ボーカルの声の厚みと伸びがすごい。空間表現力が高く、演奏の中でボーカルが浮かび上がってくる感じで、輪郭や息遣いもしっかりと感じ取ることができる。また、バスドラムもアタック感や低音感がしっかりと出るし、ベースの響きもいい。音が強くなるというよりは、リアリティが増す感じだ。このあたりのバランスのよさは、イヤホンの素性のよさに加えて、チューニングの妙によるところもあるのだろう。音楽を心地よく楽しむことを重視するOlasonicらしいところではないだろうか。ちなみに今回は、「TH-F4N」にあわせて、ベースモデル「Flat4-玄(KURO)」のほうも試聴してみたが、ベースモデルはハッキリとした出音に感じた。比べると、「TH-F4N」は少しマイルドな音に仕上がっているようだ。

聴いてみて面白かったのは、グルーブ感の強いロック調の楽曲だ。ピアノやエレキギターの演奏にボーカルとコーラスが重なってくる、もっとも音の厚みやグルーブを感じるところの表現力がすばらしい。破綻するような音がなく、かつ不自然なところもない。グループ感も増すように感じた。イヤホンの特性としては、女性ボーカルやジャズなどのアコースティック系の楽曲に向いているように思うが、グルーブ感の強いロック調の楽曲でも、ハマれば面白い結果になるはずだ。どちらかというと、やや重心が低い楽曲のほうが、他のイヤホンとの違いを感じやすいのではないだろうか。

なお、余談になってしまうが、「TH-F4N」でいくつか楽曲を聴いてみた限りでは、イーグルス「Hotel California」のハイレゾ音源ファイル(192kHz/24bitのFLAC形式)でも違いを感じた。ハイレゾ音源の代表格として人気のファイルだが、正直なところ、ハイレゾ音源でのクオリティアップは感じるものの、演奏やボーカルのよさは完全に引き出せていないと感じていた。古いマスターであるため致し方ないのかもしれないが、特に、ハイレゾ音源としては奥行き感・立体感がとぼしく、1枚覆われたように聴こえる点に不満を感じていた(※そういう表現の楽曲なのかもしれないが)。だが、「TH-F4N」では、曲の抜けの悪さがかなり改善され、ひとつひとつの楽器の音がよりクリアに聴こえてきた。

このように、音質についてはクオリティの高いイヤホンに仕上がっているが、遮音性と装着性については少し気がかりな点もある。遮音性は、カナル型としてはそれほど高くはない。また、装着性については、ハウジングを耳にフィットさせるタイプではないため、耳の穴にしっかりと挿入して使用する必要がある。ただし、ノズルが比較的大きいため、人によっては耳に入りにくい場合もあるかもしれない。耳の穴の小さい筆者の場合、付属の低反発ポリウレタンチップの小さいほう(Mサイズ)を利用しても、しっかりと装着するにはイヤホンを強く押し込む必要があった。


「TH-F4N」は、他のイヤホンにはないような個性的なサウンドを聴かせてくれる高級イヤホンだ。市場推定価格は48,800円前後となっており、ダイナミック型ドライバーを採用するイヤホンとしては高額な部類に入るが、このイヤホンでないと楽しめないハイクオリティなサウンドを考慮すると納得できる価格ではないだろうか。群雄割拠の高級イヤホン市場に注目モデルが加わったと言っていいだろう。

「TH-F4N」の仕様

エレメント 10o径ダイナミック型×2(片ch当たり)
音響方式 ツイン・イコライズド・エレメント方式
出力音圧レベル 104dBSPL/mW
周波数特性 3.5〜35kHz
最大入力 400mW
インピーダンス 18Ω
重量 約18g
プラグ付きコード 1.2m(Y型) 3.5mm径金メッキステレオミニプラグ
付属品 コンプライフォームイヤホンチップ T-200 M/Lサイズ、マイクロファイバークロス、収納缶、取扱説明書兼保証書

取材・記事 価格comマガジン編集部 mkr

先日、自宅へ帰る道すがら、突然熱中症のような症状になり、一歩も歩けなくなってしまいました。調子にのって炎天下でビールをのみ続けていたのが原因だと思われますが、あまりに突然のことでそれにびっくりしました。これが、8月7日現在、個人的に今年の夏に体験した最大の出来事になっています。多分、これが最大の出来事のまま今年の夏が終わる気がします。

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