連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

鈴木ケンイチの「クルマ好きのための“弾丸”試乗レポート」 第21回 

最先端の働くクルマ!三菱ふそう「キャンターエコハイブリッド」

自動車の環境対策技術は、クリーンディーゼルやハイブリッド、アイドリングストップ、高効率トランスミッションなど数多くあるが、これら最先端の環境技術をふんだんに満載した、注目の“ハイブリッドトラック”がデビューした。それが、今回紹介する三菱ふそう「キャンター エコ ハイブリッド」だ。商用車ではあるが、環境技術への高い志から生まれたクルマとなっている。今回は、モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏がその特徴をくわしく解説。あわせて、試乗レポートと開発者インタビューもお届けする。

意欲的な技術を満載した世界戦略車にハイブリッド技術を追加

「キャンター」は、三菱ふそうトラック・バス株式会社が発売する小型トラック。現在、三菱ふそうは、ダイムラーグループの一員となっており、そのグループの中で「キャンター」は小型トラック部門の世界戦略車として開発された。実際に「キャンター」は日本だけでなく、アジア地域で確かな信頼を獲得しているトラックとなっている。

現在の「キャンター」は2010年にフルモデルチェンジが行われている。このモデルチェンジにおいて、排気ガス浄化に、ダイムラーグループの誇る「Blue Tec」技術を使用することで、世界でもっとも厳しい日本の「ポスト新長期排出ガス規制」に小型トラックとして初めて適合。「Blue Tec」とは、エンジンの燃焼でPM(スス)の発生を抑え、それでも出たPM(スス)はフィルターで取り除き、光化学スモッグの原因となる「NOx」を尿素で無害化するというものだ。また、「キャンター」は、トラックとして世界初となる「DCT」(デュアルクラッチ・トランスミッション)の「DUONIC」(デュオニック)を採用。効率のよいトランスミッションを使うことで良好な燃費性能と、ドライバーの疲労軽減の両方を実現している。

つまり、最新の「キャンター」は、ダイムラーグループの世界戦略車として、トラックでありながらも、技術的には最先端のものを満載した意欲的なクルマとなっている。その「キャンター」をベースに、さらなる燃費性能向上を目指して生まれたのが、今回紹介する「キャンター エコ ハイブリッド」なのだ。

2012年5月18日より発売が開始された「キャンター エコ ハイブリッド」。12.8km/lというクラストップの燃費性能と、ポスト新長期規制をクリアするクリーンな排気ガスを達成。エコカー減税の対象であり、九都県市指定低公害車の指定を受けている。価格は548万6250円〜

「キャンター エコ ハイブリッド」の最大の特徴は、DCTをハイブリッドシステムと組み合わせたこと。この組み合わせは乗用車にはなく、量産車としても世界初となっている。DCTは名称に「デュアル」とあるように、ミッション内部が「1−3−5速」と「2−4−6速」のように2軸になっている。DCTは、その2軸を切り替えることで、すばやい変速を可能にするミッションなのだ。「キャンター エコ ハイブリッド」では、その偶数段にモーターを設置。DCTを使って、モーターの力とエンジンの力をミックスさせる。その結果、「モーターのみ」「エンジンのみ」「モーター+エンジン」という3つのパターンで力を切り替えて走ることを可能としている。

なお、「キャンター エコ ハイブリッド」は、ハイブリッド化によって最高12.8km/lというクラストップの低燃費を実現している。車両重量3トンを超えるトラックが乗用車に迫る燃費性能を実現したのは驚くばかり。ちなみに、ベースモデルに対比すると、ハイブリッド化による価格上昇は90万円前後。ハイブリッド化による燃費向上は30%程度。年間の走行距離にもよるが、十分に燃料節約で元が取れる価格設定になっている。

総排気量2998ccの直列4気筒インタークーラーターボ・ディーゼルエンジン。最高出力96kW(130PS)・最大トルク300Nm。これにトランスミッション内に設置された最大40kW・200Nmのモーターがアシストする

クリーンディーゼルエンジン、ミッションに組み込まれたモーターとDCTが縦に並び、車体の左側にリチウムイオンバッテリーとインバーターが搭載される

電池はラミネートタイプのリチウムイオンバッテリー。10年の保証がついている

排気ガス内のPM(スス)はDPFというフィルターで捕集し、燃焼させて除去する。光化学スモッグの原因となるNOxは、尿素を噴霧することで窒素と水に分解し、無害化させる。そうした技術の総称がダイムラーの「BlueTec」技術だ

あっさりとした操作系で、走行に小難しいものは何もない

続いて試乗の様子をレポートしよう。試乗車として用意されたのは「キャンター エコ ハイブリッド」のバン。ワイド&ロングボディの3トン積み車だ。

よじ登るようにして運転席へ。運転席まわりの印象は、「なんだかあっさりしているな」であった。シフトノブもシンプルで、操作系のスイッチを見渡しても、乗用車とほとんど変わらず、使い方のわからないものはない。足下は2ペダル。ハイテクを結集したモデルではあるが、ドライバー目線でいえば、面倒なものはなにもない。

エンジンを始動させると、いかにもディーゼルという「ガラガラ」という音と振動を感じる。ゆっくりとアクセルを踏み込むと、スーッとモーターで走り出す。時速10kmを超えるとタコメーターの針がアイドリングレベルからピっと動き出して、エンジンの力が駆動力に加わる。モーター走行なのに、エンジンがアイドリングを維持するのは、パワステやブレーキブースターなど補機類を生かすためだ。

加速を続けるとシフトアップしてゆくが、そのときに不快な変速ショックやトルクの抜けはない。このあたりは乗用車の感覚そのままだ。アクセルを抜いて、エンジンブレーキをかけようとすると、回生ブレーキモードに入る。エンジンはアイドリングレベルまでストンと落ちて、モーターの抵抗が減速の力を生み出す。減速の力で発電を行っているのだ。このときはディーゼルエンジンの発する振動が一気に減る。エンジンの音や振動が、はっきりわかるので、ハイブリッドシステムが何を行っているのかが体感できるのも、商用車ハイブリッドならではだろう。

信号で停車すると、やや時間を空けてエンジンを停止させる。ここまで停車から5秒ほど。再始動にも1秒ほどかかる。エンジニアいわく「トラックは乗用車に比べて、システム全体の反応が遅いんです。なので、再始動に1秒ほど必要です。そのためクルマが停車してすぐにエンジンを止めると、“やっぱりすぐに走り出したい”という状況でストレスになります。なので、ある程度の時間停車することを判別するために5秒を見させてもらっています」というのだ。

試乗は空荷ではなく、1トンほどの荷物が積載されていた。街中のストップ&ゴーでは、ほぼ不満なく走っていたのだが、勾配のきつい山坂道に入ると、“あと少し”というパワー不足を感じてしまった。とはいえ、メーターに表示された平均燃費は9km/l弱。10km/lを超えることはできなかったが、十分な燃費性能を備えていると見ていいだろう。

まとめると、「キャンター エコ ハイブリッド」は、ハイテクを駆使した先鋭的なモデルではあるが、実際に走らせてみれば気むずかしい部分は何もなかった。気になったのは、アイドリングストップからの再始動が乗用車よりも遅いことくらいだろうか。しかし、それは慣れで対応できるという程度。最新鋭ということに構えることなく走らせることのできるトラックであったのだ。

特別なものはなにもなく、スッキリとした運転席まわり。ただし、メーター内にモーターの使用状況は表示されている



ページの先頭へ