連載 - ライター・編集部員による定期連載 -

鈴木ケンイチの「クルマ好きのための“弾丸”試乗レポート」 第11回 

ホンダの新型軽自動車「N BOX」は、“広さ”だけじゃない!?

「NEW NEXT NIPPON NORIMONO」をキャッチコピーに登場したホンダの新型軽自動車「N BOX」。新しいスタンダードへの強い意気込みを感じさせるコピーを与えられた新型モデルは、いったいどのようなクルマなのだろうか? 開発者インタビューも交えながら、モータージャーナリスト・鈴木ケンイチ氏がくわしく紹介する。

「Nシリーズ」の第1弾は“ミニミニバン”

スクエアなフォルムから室内の広さがイメージできる「N BOX」のエクステリア。価格は124〜146万円。前輪駆動と4輪駆動を用意する

ホンダの新型軽自動車「N BOX」は、2011年12月開催の「東京モーターショー 2011」開幕の直前となる、11月末に発表された。「東京モーターショー 2011」のホンダ・ブースでは、「N BOX」を源流とする、いくつかの派生モデルが展示されており、軽自動車の新ラインアップ「Nシリーズ」を新しく展開していくことを高らかにアピールしていた。ちなみに、「Nシリーズ」は、ホンダ軽自動車の原点となる「N360」の“N”をキーワードに命名されている。


その「Nシリーズ」の第1弾モデルとなるのが「N BOX」だ。目指したものは“ミニミニバン”。軽自動車の枠の中で最大限の広さを追求しているのが特徴だ。


広さの実現に大きく貢献したのが、新しいプラットフォームだ。「N BOX」は、「フィット」でも使われる「センタータンク・レイアウト」(燃料タンクを後席下ではなく、車体の中央下に配置する)を軽自動車として初めて採用した。また、エンジンルームのコンパクト化も徹底。新しく開発したエンジンとCVTを小さくするだけでなく、衝突安全の確保のために、衝突後につぶれて小さくするという工夫まで施した。


その結果として得たものが、ホンダのクルマ作りの理想「マンマキシマム/メカミニマム(人の空間は最大に、メカは小さく)」を具現化した広々とした車内空間だ。軽自動車として広いだけでなく、乗員数の少なさを逆手に取り、一人当たりのスペースは5人や7人乗りのミニバンにも負けないほどとなった。

フィットにも採用されている「センタータンク・レイアウト」。燃料タンクを車体の中央に持って来ることで、後部座席より後ろの床面を低くできる

衝突安全性能を確保しながら、小さなエンジンルームを実現させるため、衝突時にエンジン関係のパーツが潰れて空間を生み出すようになっている

シートはミドルクラス・セダンなみの大型の骨格を採用。座面は表面が張っているものの、その奥がやわらかいという構造だ

前後のシートの間隔はたっぷりある。男性が座っても膝の前には余裕の空間。また頭上空間も十分すぎるほどある

後席は座面を持ち上げることができる。床が低いため、天井までの上下寸法は140cmにもなる。小さな子どもであれば室内で立って着替えも可能だ

4人乗車しているときの荷物スペースはミニマム。座面を前に倒すと簡単に広いスペースにすることができる

とはいえ「N BOX」はただ“広い”だけではない。メインのターゲットとなる子育てファミリーの女性ユーザーの使い勝手にとことんこだわった。

自転車をただ載せられるのではなく、「楽に」載せられるようにした。ラゲッジルームの床をとことん低くし、逆に天井は高くした。これにより、女性でもより楽に自転車をクルマに乗せられる。また、クルマのキーをポケットではなく、バッグなどに入れることの多い女性のために、スマートキーを標準装備に。ティッシュボックスを丸ごと収納できるグローブボックスも女性の意見をもとに採用したという。さらに、車庫入れや縦列駐車をアシストする「ピタ駐ミラー」を開発。ミラーを組み合わせることでクルマの死角を減らしている。

こうした細かい工夫を数多く積み上げていることが「N BOX」の大きな特徴なのだ。

低い床と高い天井があるため、自転車を積載するときは、人も一緒になって上がることができる。そのため力の弱い人でも積載しやすくなっているのだ

グローブボックスはティッシュケースが箱ごと入る。車内にティッシュボックスが置いてあるのを恥ずかしがる女性の意見から採用されたという

クルマの死角を減らすために「ピタ駐ミラー」を採用。サイドミラーの外側に鏡を備え、ピラー部に備えた鏡で斜め前を確認できるようになっている。また、車体の真後ろの直下も見えるようにバックドア上にミラーを設置している

また、より強いイメージを求めるユーザーに向けては、ブラックを基調にメッキなどを配したインテリアの「N BOX カスタム」を用意。こちらにはターボを装着した「ターボ・パッケージ」がラインアップされている。男性ユーザーなどに「N BOX カスタム」は人気が出そうだ。

より強い個性を狙い、エクステリアや内装をグレードアップさせた「N BOX カスタム」。こちらにはNA(自然吸気)エンジンだけでなく、ターボ・エンジンを搭載したターボ・パッケージを用意。前輪駆動と4輪駆動を用意。価格は144〜178万円

十分な動力性能と安心感のある走り

次に、「N BOX」の走りをレポートしたい。新開発されたパワートレインは3気筒DOHCとCVTの組み合わせだ。最高出力は43kW(58PS)/7300rpm、最大トルクは65Nm/3500rpm。ターボ・モデルだと47kW(64PS)/6000rpm、最大トルクは104Nm/2600rpmとなる。

試乗したのはターボのない「NAモデル」。DOHCということで「高回転で伸びるのか?」と思ったが、走り出せば、大柄な車体をグイグイと押し出すトルクの太さが印象的だ。高速道路へ合流するための加速力も十分。高速道路の流れについていくことに苦はない。また、先にエンジン回転が上がり、車速が遅れて上がるというCVTならではのフィールは若干あるけれど、トルクフルなエンジン・キャラクターもあって不満は少ない。

ターボ・モデル以外には、アイドリング・ストップ機能をホンダの軽自動車として初採用した。作動は完全停止後1秒後だ。始動もスムーズで、なんらドライブに違和感を与えない。これでJC08モード燃費はFFモデルで22.2km/lとなる。驚くほどよいわけではないが、空力の悪いワンボックスタイプとしては良好な数字だ。

ハンドリングには安心感がある。ロールするときにグラリと倒れるような不安感はない。ステアリングの操作感はパワーアシストが強めで軽い。ステアリング操作に対するクルマの動きが穏やかであり、さらに直進性も良好なことも安心感を強める。また、標準装備となる横滑り防止装置(VSA)の存在も心強い。

「N BOX」は、軽自動車としては大柄ではあるが、十分な動力性能があり、それでいてリラックスできる安心感も兼ね備えているのだ。

エンジンはNA(自然吸気)とターボの2種類を用意する。最高出力はNAで最高出力43kW(58PS)、JC08モード燃費22.2km/l(FFモデル)。ターボで最高出力47kW(64PS)、JC08モード燃費18.8km/l(FFモデル)。NAモデルにはアイドリング・ストップ機能が備わる

軽自動車としては大柄だが、トルクフルなエンジンのため、パワー不足を感じることはほとんどなかった



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