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大きな一歩を踏み出した、ホンダの二足歩行ロボット 

新型「ASIMO」は“自動”から“自律”にさらなる進化を遂げた!

ホンダの技術力が結集して誕生した二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」。2011年11月8日、その「ASIMO」の新型モデルがホンダから発表された。今回の新型「ASIMO」は、2005年以来のフルモデルチェンジを果たしており、ハード面に加えて、“知能”が大きく進歩したのも見逃せない特徴。ここでは、埼玉県和光市の本田技術研究所で開催された発表会を取材したモータージャーナリスト・鈴木ケンイチ氏が、新型「ASIMO」の進化点をくわしくレポートする。

抜群の運動能力に目を奪われる!

走る速度は時速9kmに向上。片足でのジャンプや凹凸のある路面でも歩けるようになっている

前回、2007年に発表された「ASIMO」は、2005年モデルからの知能化技術(人の姿勢やしぐさの意味を理解して自律的に行動する技術)が進化していたが、今回発表された新型「ASIMO」は、ハード面で、2005年モデル以来の大きな進歩を遂げている。


新型「ASIMO」の身長は2005年モデルと同じ130cm。体重は従来の54kgから48kgへと軽量化されている。全体の雰囲気は似ているが、ディテールは異なり、まったくの新型になっていることがわかる。


そのまったく新しい「ASIMO」は、運動性能が大きく向上していた。走るスピードは2005年モデルの時速6kmから時速9kmに。歩行から走行までを一時停止なしでシームレスに行えるようになっており、20mmまでの凸凹のある路面の上でも歩行が可能になった。


発表会では、新型「ASIMO」は、モーターの音はやや大きいものの、ステージ上を走るだけでなく、片足で跳ね、デコボコ道を難なく歩く。そして、サッカーボールを蹴ることまで披露したのだ。蹴ってもバランスを崩さないということが技術的には難しいという。


また、全身の関節自由度は34から57に増加。手だけでも13の自由度を持ち、手のひらに触覚センサーを44チャンネル、5本の指先に6軸力センサーをそれぞれ装備。繊細な感覚と自在な動きによって、やわらかい紙コップをつかむことも可能とした。発表会では、手話を行い、ナイーブな表現も行えることをアピールしていた。


さらに、発表会では、複数話者の同時認識のデモも行われた。これは、新型「ASIMO」の前に立った人間3人が、同時に「ホットコーヒー」「オレンジジュース」「ミルクティー」と話しかけ、それを視覚センサーと聴覚センサーを連動することで、聞き分けるというもの。新型「ASIMO」は、頭部に仕込まれた複数のマイクを使い、音源方向の違いによって音声を分離。さらにすべてのマイクの共通成分を除去することで、音声をクリアに解析。これに視覚センサーからの情報をあわせることで、同時に発せられた音声を聞き分け、オーダーに対応する行動を実行することができていた。これは人間ではほぼ不可能なことであり、ロボットならではのすぐれた技術といえるだろう。

手のひらだけでなく指先にもセンサーを内蔵。視覚と触覚をあわせて、ビンのフタを回したり、潰れやすい紙コップをつかむことも可能となっている

頭部に備わっている複数の聴覚センサーによって、同時に発せられた複数の音声を分離し、視覚センサーによって、誰の言葉かを認識する。デモでは3人の同時のオーダーを聞き分けた

本当にすごいのは知能の進化

2機の新型「ASIMO」が2人の来訪者を案内するデモンストレーションを実施。自律行動生成機能を利用して、フレキシブルな対応や動きを見せた

新型「ASIMO」の動きを間近に見ると、どうしても高い運動能力に目を奪われてしまう。しかし本当のところ、今回のフルモデルチェンジで重要なポイントは別にある。


今回のフルモデルチェンジのトピックは、「自律行動制御技術」を世界で初めて搭載したところにある。自律行動制御技術とは、読んで名のごとく、自分で判断して動くための技術だ。


実は、これまでの「ASIMO」は、あらかじめ決められていたプログラムパターンを実行しているにすぎなかった。それが新型では、周囲の状況から未来を予測し、過去の経験をプラスして、対応可能な行動パターンを複数作り、その中から“何がよいのか”を選択できるようになったのだ。つまり、自ら判断して行動する、自動機械から自律機械へと進化しているのだ。


ちなみに、自律行動を行うためには、外界の認識能力の向上が必須となる。そのひとつが、デモンストレーションでも行われた複数話者同時認識であり、そうした認識能力の向上も、知的能力の進歩の土台となっている。


こうした知的能力の進化により、新型「ASIMO」は、よりフレキシブルに人の動きや状況に合わせた行動が可能となった。発表会では、2人の訪問者を迎えた2台の新型「ASIMO」が、ロビーで接客するデモンストレーションも実施された。


突然やってきた訪問者をスムーズに迎え、席に案内をする。そこでモニター画面を使った案内を行う。そこに、もう1台の新型「ASIMO」がドリンクを運んでくると、案内を一時停止。また、歩行中に人とぶつからないコースを選ぶなどのフレキシブルな対応を見せたのだ。あらかじめ決められたプログラムではなく、それぞれが自律的に行動を行うというところを見せたのである。


だが、知的能力の進化というものは、運動能力の進化に比べると、どうしても地味に見える。走ったりすることに比べると、進化の度合いがわかりにくいもの。それでも1986年からスタートしたホンダのロボット開発の歴史をふり返れば、今回の「自動」から「自律」への質的な進化は非常に大きな一歩と言えるだろう。


ロボットは、スイッチを押すと決められた動きをする機械ではなく、自律的に考え動けるものである。そうした未来に向けて、新型「ASIMO」は、小さいけれど重要な一歩を踏み出したのだ。

モータージャーナリスト/鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材、ドライブ企画まで幅広く行う。いわば全方位的に好奇心のおもむくまま。プライベートでは草レースなどモータースポーツを楽しむ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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