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「SIGMA GLOBAL VISION」の「Art」ラインに属する注目レンズ 

シグマのレンズ技術が詰まった「35mm F1.4 DG HSM」を試す!

「35mm F1.4 DG HSM」は、シグマが新たに開発した、35mmフルサイズ対応の広角・単焦点レンズ。価格は11万8,000円(税抜)で、レンズメーカーが提供する単焦点レンズとしては高額な部類の製品となっている。ただし、その分、光学性能は高く、シグマがこれまで培ってきたレンズ開発技術をつぎ込んだ自信作だ。発売は、シグマ用が11月23日、キヤノン用が11月30日(※その他マウント用も準備中)。今回、その内のキヤノン用をいち早く試用することができたので、実写画像を交えながら、この注目の広角・単焦点レンズをレビューしたい。

新コンセプト「SIGMA GLOBAL VISION」の第1弾製品

キヤノンのフルサイズデジタル一眼レフ「EOS 5D Mark III」に、シグマの新型単焦点レンズ「35mm F1.4 DG HSM」を装着したイメージ

シグマは、ここ数年、高性能な単焦点レンズの開発に積極的に取り組んでいる。具体的には、2008年6月に「50mm F1.4 EX DG HSM」を、2010年9月に「85mm F1.4 EX DG HSM」をリリース。いずれも、カメラメーカーの純正レンズを脅かすほどのすぐれた描写性能を実現し、実ユーザーから高い評価を得ている。ポイントは、価格以上の写りを実現していることだ。


「35mm F1.4 DG HSM」は、そうしたシグマの高コストパフォーマンスな単焦点レンズ群に属する製品で、「開放F1.4」の明るさを備える、大口径の広角・単焦点レンズとなっている。価格.comでの「50mm F1.4 EX DG HSM」と「85mm F1.4 EX DG HSM」の評判を見る限りでは、今回の「35mm F1.4 DG HSM」にも描写力の高さを期待したいところだ。実際、同社の製品ページにも、「フラッグシップにふさわしい最高レベルの描写性能」「最高の基準を刷新するシグマの自信作」といった強気の言葉が並んでおり、同社が、その完成度にかなり自信を持っていることが感じられる。


ここで、シグマが2012年9月に発表した交換レンズ製品の新しいコンセプト「SIGMA GLOBAL VISION」について少し説明しておこう。「SIGMA GLOBAL VISION」では、交換レンズ製品を定義し直し、すべてのレンズを「Contemporary」「Art」「Sports」という、コンセプトの異なる3つのプロダクトラインに分類している。この狙いは、レンズの画角特性や開発意図をクリアにすることで、レンズの個性を明確にすること。今後、シグマのレンズは、この3つのプロダクトラインのいずれかに属することになっている。


「Contemporary」は、「最新のテクノロジーを投入、高い光学性能とコンパクトネスの両立で、幅広い撮影シーンに対応する」というハイパフォーマンスライン。ここには、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズ、高倍率ズームレンズが属することとなる。新製品としては、新型の「SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM」が準備されている。


「Art」は、「あらゆる設計要素を、最高の光学性能と豊かな表現力に集中して開発し、高水準の芸術的表現を叶える」というアーティスティックライン。端的に言えば、大口径の単焦点レンズや広角レンズなどの描写性能にすぐれるレンズと、超広角レンズ、マクロレンズ、フィッシュアイレンズなどなどの画角に特徴のあるレンズが属することとなる。このラインの新製品として用意されるのが、今回紹介する「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」だ。


「Sports」は、「高度な光学性能と表現力はそのままに、撮影者の意図にダイレクトに応え、高い運動性能を発揮する」というスポーティーライン。このラインに属するのは、望遠レンズや望遠ズームレンズ、超望遠レンズ、超望遠ズームレンズ。新製品として、新型の「SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM」が準備されている。


これら3つのプロダクトラインの新製品の中で、もっとも早くリリースされるのが、「Art」ラインの「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」というわけだ。これだけでも、シグマがこのレンズにかける力の入れようが伝わってくるだろう。

「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」のレンズ本体には、「Art」ラインの“Aマーク”が付いている

また、「SIGMA GLOBAL VISION」では、プロダクトラインを分けるだけでなく、新たに、独自のMTF測定器「A1」を用いて、出荷前にレンズの全数検査を実施することも発表している。このMTF測定器「A1」は、シグマのデジタル一眼レフ「SD1 Merrill」やデジタルカメラ「DP Merrill」シリーズに搭載されている、4600万画素の「FOVEON X3ダイレクトイメージセンサー」を用いた測定器で、一般的なMTF測定器では検出できなかった高周波成分の検査を可能にしたことにより、高い品質水準を確保できるとしている。もちろん、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」も、このMTF測定器「A1」を用いた検査が行われる。

さらに、「SIGMA GLOBAL VISION」の新しいレンズ製品には、専用のカスタマイズ機能も用意される予定。「USB DOCK」(2013年発売予定)を介してレンズをパソコンと接続し、専用ソフトウェア「SIGMA Optimization Pro」を使って、レンズのファームウェアのアップデートや、合焦位置の調整が可能になるとのことだ。なお、「Sports」ラインのみ、フォーカスリミッターの調整も行えるとのこと。

色収差の補正にこだわった高性能設計

続いて、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」のレンズ性能を見ていこう。

さまざまな点で高いスペックを実現している「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」だが、その中でも特に注目したいのが、色収差の補正能力だ。蛍石と同等の性質を持つFLD(“F” Low Dispersion)ガラス1枚と、SLD(Special Low Dispersion:特殊低分散)ガラス4枚を採用し、レンズのパワー配置の最適化を行うことで、倍率色収差だけでなく軸上色収差も良好に補正できるようになっている。さらに、パワー配置の最適化によって、コマフレアの発生も抑制。画面周辺部の点光源でもにじみが少ないので、夜景や天体写真にも向いているとしている。フレアやゴーストの発生を軽減するスーパーマルチレイヤーコートも採用している。

また、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は、レンズ第一面に非球面レンズを配置することで、ディストーションを補正しながらも周辺光量を確保。2枚の非球面レンズの適切な配置により、非点収差と像面湾曲の補正を可能にし、画面周辺まで解像力の高い描写を実現している。フォーカス機構は、内部のいくつかのレンズ群を、それぞれ異なる繰り出し量で動かすフローティングインナーフォーカスだ。

このほか、9枚の円形絞りを採用し、円形の美しいボケ味を実現。AFモーターには、静寂で高速なAFが可能な超音波モーター「HSM(Hyper Sonic Motor)」を搭載する。AFアルゴリズムを改良することで、よりスムーズなAFを実現しているほか、フルタイムマニュアル機能も搭載し、使い勝手にもすぐれたレンズとなっている。

さらに、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は、本体のデザインが大きく刷新されたのも見逃せないポイント。従来以上にシンプルさを追及したフォルムとディテールで、高級感のある外観に仕上がっているのだ。

シンプルで高級感のある外装。レンズキャップや、AF/MF切り替えスイッチのデザインも刷新されている。また、マウント部には、高精度で堅牢な真鍮製のバヨネットマウントを採用

細かいところでは、付属の花形フード(LH730-03)の接続部にラバーを採用しているのも見逃せない。ラバーには、スペックやSIGMAなどの文字が彫られているという凝りよう。フードを着脱する際や、フォーカスリングを操作する際など、この部分に指が触れるときに手触りがよいのもポイントだ

「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」の主な仕様

焦点距離 35mm
F値 F1.4〜F16
レンズ構成 11群13枚
最短撮影距離 30cm
最大撮影倍率 1:5.2
絞り羽枚数 9枚(円形絞り)
フィルター径 67mm
大きさ(最大径×全長) 77mm×94.0mm
重量 665g

作例から描写力をチェック

※以下に掲載する作例は、キヤノン「EOS 5D Mark III」に「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」を装着して撮影したものになります。

※サムネイル画像をクリックするとリサイズ・補正を行なっていない撮影写真(JPEG、5760×3840)が別ウィンドウで開きます。なお、写真はすべて、高感度撮影時のノイズ低減「標準」、長秒時露光のノイズ低減「しない」、記録画質「L ファイン」、オートライティングオプティマイザ「標準」、高輝度側・階調優先「しない」の設定で撮影を行っています。

ISO100、F1.4、1/800秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO200、F1.4、1/60秒、EV+1.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F1.4、1/2500秒、EV-0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO100、F1.4、1/640秒、EV+1.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F1.8、1/2000秒、EV+0.7、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO200、F2、1/60秒、EV+1.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F2、1/125秒、EV+0.7、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、絞り優先AEモード

ISO400、F2.2、1/80秒、EV+1.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO320、F2.8、1/80秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、絞り優先AEモード

ISO100、F3.2、1/80秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F3.2、1/400秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO250、F4、1/80秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F4、1/200秒、EV0.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO200、F4、1/60秒、EV+1.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、絞り優先AEモード

ISO125、F4.5、1/80秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F6.3、1/125秒、EV0.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO800、F6.3、1/60秒、EV-1.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO320、F7.1、1/60秒、EV0.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO100、F8、1/100秒、EV+0.7、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO125、F8、1/80秒、EV+0.7、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、絞り優先AEモード

ISO100、F8、1/250秒、EV0.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、絞り優先AEモード

ISO100、F8、1/2000秒、EV0.0、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、絞り優先AEモード

ISO100、F8、4秒、EV+1.7、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

ISO100、F11、6秒、EV+0.3、測光:評価、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、絞り優先AEモード

一般的に、焦点距離が35mm以下の「大口径・広角レンズ」というと、どうしても、絞り開放付近での描写が甘くなりがちだ。単焦点レンズであっても、レンズによっては、絞り開放で周辺光量が大きく低下したり、ピント位置でもシャープな描写が得られないものもある。それだけ、広角レンズで大口径を実現しながら、幅広い絞り値(F値)ですぐれた描写性能を発揮するのは難しいのだ。「大口径・広角レンズ」については、「開放から1段程度絞らないと使えない」というのが一般的なところだろう。

だが、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は違う。高性能を謳う単焦点レンズらしく、絞り開放からピントが合ったところでは非常にシャープに写る。さらに、絞り開放でも、にじみがなく、クリアでコントラストが高い描写が得られるのも見逃せない。ここまで写るのであれば、十分に開放から使用することができるはずだ。当然、F値を少し絞ると、よりシャープで緻密な描写が得られることも付け加えておこう。周辺部も、細かいところまでしっかりと解像しており、レンズ性能の高さがうかがえる。

さらに、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は、気になるような色収差がほとんど見られないのがすばらしい。開放付近でのシャープな描写は、色収差をうまく補正できていることが大きく寄与しているはずだ。これは本当にすごいと感じる部分である。

周辺光量については、フルサイズセンサーを搭載する「EOS 5D Mark III」で使用した限りでは、F値を絞った時に比べて、開放付近ではやや光量落ちが見られる。ただ、F2.5〜F2.8くらいまで絞ると、光量落ちは気にならなくなる。

ボケ味については、シグマのレンズの特徴でもあるのだが、背景ボケはやや硬い印象を受ける。ただ、F2.8〜F4程度の絞り値だと、比較的、自然なボケ味が得られる。個人的には、絞り値をF4程度に絞って、1〜2mくらいの距離の被写体を撮影した際の描写に好感を持った。クリアでボケ味も自然で、非常にバランスがよい描写だと思う。

さらに、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は、オートフォーカスがスピーディーになっている点も押さえておきたい。「EOS 5D Mark III」と組み合わせて使用した限りでは、ストレスのないオートフォーカス撮影が行えた。

「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は重量665g。「EOS 5D Mark III」と組み合わせた際の重量バランスは良好で、ホールドしやすかった

まとめ

「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は、11万8,000円(税抜)という価格設定になっており、けっして安いレンズではない。ただ、カメラメーカー純正の高性能な35mm単焦点レンズは、価格.com最安価格でも15万円程度となっており、それらと比較すると、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」のほうがコストパフォーマンスは高い。「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」の描写性能については、絞り開放からシャープな画質が得られるのが特筆すべき点で、総合力は純正レンズとまったくそん色ないレベルだ。レンズメーカーがこういった高性能なレンズを安く提供することは、非常に意義があることで、「写りのいいレンズをより安く手に入れたい」というニーズにマッチする製品となっている。さらに、「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」は、オートフォーカスの速度も向上しており、純正レンズと遜色ないレスポンスで使用できるのもポイント。35mmという画角も扱いやすく、スナップや風景撮影などに幅広く使用することができる、高性能な1本となっている。

撮影・記事 価格comマガジン mkr

カメラ系のレビュー記事はちょうど1か月ぶりの更新となります。更新が滞ってしまっていて、申し訳ありません。まだまだ紹介したいカメラやレンズは山のようにありますので、これから年末にかけては、力を入れてがんばりたいと思います。

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